FORM TECH REVIEW_vol31
55/110

図10 種々の接合材の引張せん断応力と伸びの関係 -, (2006), 産報出版. 図11 レーザ加工接合材の断面SEM写真 (a)炭素繊維SEM写真である。図9(a)では、突起裏側の隙間まで炭素繊維が侵入していたが、図9(b)では、炭素繊維が突起裏側の隙間まで侵入しておらず、炭素繊維の方向によって、突起の隙間への侵入のしやすさが異なることがわかった。図10に引張せん断試験結果を示す。なお、図の縦軸の引張せん断応力は、破断荷重をCFRPの断面積で除した値である。図より、炭素繊維が引張方向に平行なTP1が最も高い引張せん断応力を示した。斜めに積層したTP3は最も高い伸びを示したが、引張せん断応力は最も低くなった。また、TP1はレーザ接合材よりも高い応力を示した。図11に、レーザ接合材の接合部近傍における炭素繊維の軸方向および垂直方向の断面SEM写真を示す。図より、レーザ加工では溝幅が狭く、炭素繊維が溝内部まで侵入していないことが確認できる。一方、AM接合材では、図9に示すように、突起裏側まで炭素繊維が侵入していない箇所が一部で存在するが、多くの炭素繊維が突起の隙間に侵入していることから、炭素繊維のアンカー効果が働いたため、AM接合材がレーザ接合材より高い引張せん断応力を示軸方向断面 (b)炭素繊維垂直方向断面 1) 森田泰・藤田幾雄:溶接技術, 11 (1974), 20. 2) 福本昌宏・椿正己・下田陽一朗・安井利明:溶接学3) T.Tanaka・T.Morishige・T.Hirata:Scripta Mater., 61-7 4) 田中努・根津将之・内田壮平・平田智丈:軽金属, 70 5) 社団法人溶接学会編:摩擦攪拌接合-FSWのすべて6) 平成29年度戦略的基盤技術高度化支援事業「CFRPと金属材料の直接接合技術の開発」研究開発成果等報告書 したと考えられる。以上のことから、表面形状を制御することで、従前技術以上の引張せん断応力を有する金属とCFRPの接合材を作製できることを明らかにした。今後、数値計算を活用し、炭素繊維が突起の隙間に侵入しやすく、かつアンカー効果がより働く形状を明らかにすることができれば、さらなる応力上昇が期待できる。 4.まとめ 本研究では、数百mから数mmの突起を表面に作製し、突起によるアンカー効果を利用した異材接合方法を開発することを目的とし、突起形状が接合材の引張応力に及ぼす影響を数値計算および実験により検証した。その結果、接合材の引張応力は、突起の形状に強く依存し、数値計算によってその依存性を予測できることを明らかにした。また、本技術を金属とCFRPの異材接合に適用したところ、従前技術よりも高い引張せん断応力を示すことを確認した。本技術は、"突起の形成"と"接合"の2つのプロセスに分けられる。本研究では、"突起の形成技術"としてAMを、"接合技術"としてFSWおよび熱圧着を用いたが、これら以外の技術でも適用できることが本技術の特徴である。例えば、"突起の形成技術"であれば、切削・鋳造・鍛造などが、"接合技術"であれば、摩擦圧接・鍛造・熱間等方圧加圧法(Hot Isostatic Pressing: HIP)・鋳造・アーク溶接・レーザ溶接などが挙げられる。また、金属やCFRPを含む樹脂材料、セラミックスなど様々な材料の組合せで接合できる可能性を秘めている。以上のように、本技術は、従前技術に比べて適用可能な加工技術が多く、様々な生産技術分野で利用できるため、今後、新しいマルチマテリアル化技術として大きく発展することが期待される。 本研究は、公益財団法人天田財団からの一般研究助成(AF-2019013-B2)により実施した研究に基づいていることを付記するとともに、同財団に感謝いたします。 会論文集, 22-2 (2004), 309. (2009), 756. (2020), 503. 謝■辞 参考文献 - 53 -

元のページ  ../index.html#55

このブックを見る