図1従来の塑性流動結合法ででくくだだささいい■輸送機器などの複雑形状部品または多機能部品の製造において,生産性改善,コスト削減や環境負荷低減のために,複数部品の溶接・ボルト締結に代わる技術として金属の塑性を利用した結合法が研究されている.自動車の駆動機器などを対象とした軸と円盤部品の塑性結合方法には,塑性流動結合法1),シェービング接合2,3),植込み接合4,5)などが提案されている.このうち塑性流動結合法は1980年前後に開発され,主に自動車部品において実用化されている方法である.従来は図1に示すように軸と円盤状の部材を精密なはめあいで組み立てた後に,軟質円盤部材の一部を円筒状の専用パンチで加圧し,硬質軸部材に設けた結合溝に軟質円盤部材を塑性流動させることによって結合するものであった.部品点数が少なく,プレス工程に組込めるため,軽量・低コストで生産性が高い結合法である.村上らは,高精度かつ生産性の高い結合法であるという特徴に着目し,様々な部材の組み合わせに対して塑性流動結合法の展開を図ってきた6~10).しかし,従来の塑性流動結合法は軸部品輪郭形状に合わせた筒状の専用パンチが必要不可欠であり,パンチ作製・維持コスト,適用可能な形状の自由度,少量生産部品への適用の難しさなどが課題となっている.写写真真位位置置■削削除除ししなないい1.緒言 *東京農工大学 工学府 機械システム工学専攻 産学官連携研究員**宇都宮大学大学院 地域創生科学研究科 准教授2.結合原理薄井雅俊,白寄篤近年では塑性流動結合法のさらなる応用として,広田ら11,12)やF. Dorraら13)などによって専用の結合パンチを必要としない新たな塑性流動結合法が研究されている.広田らの手法は,セレーション加工を施した焼入れ軸を軟質円盤部材の穴に押し込むことでセレーションの谷部に円盤部材を塑性流動させる方法である.軸抜き強度よりもねじり強度を重視した結合法であるが,硬度差が小さい材料の組合せではセレーションが潰れてしまい結合が難しい.一方Dorraらの手法は,段付き軸の上下両端に圧縮荷重を負荷して小径部に塑性流動を生じさせる方法であり,硬度差に関係なく結合が可能である.しかし,軸が円盤を完全に貫通している部品でないと適用できない.また,塑性変形の生じる範囲を結合部に限定できないため軸部品の小径部全体がタル型に変形してしまう.そこで著者らは,専用の結合パンチを必要としない塑性流動結合法として前述の方法とは異なる新たなパンチレス塑性流動結合法を開発した14)~17).これまでの報告では,鉄鋼系材料(S45CとSKD11)の結合や異種材(A5056とS45C)の結合において従来の結合法と同等以上の結合強度が得られることを明らかにし,専用パンチを必要としないために低コストであり,少量生産にも対応でき,異種材の結合にも有効な方法であることを示した.しかし,このパンチレス塑性流動結合法は部品間の硬度差が必要不可欠であり,硬度差のない材料(同質材)の組合せでは軸部品,穴部品ともに塑性変形が生じることで結合強度(結合効率)が大幅に低下する.よって,本結合法を適用可能な材料の組合せには限りがあった.そこで本研究では,パンチレス塑性流動結合法の適用範囲拡大の期待に応えるため,硬度差の無い材料にも適用可能なパンチレス塑性流動結合法を開発する. ■■これまでのパンチレス塑性流動結合法の原理図2にこれまでに開発したパンチレス塑性流動結合法の概略を示す.この結合法では,軸部品と穴部品は互いの硬度を比較してどちらか片方が軟質材料となる組合せの材料を使用し(図2は軸が軟質な場合を示す),硬質側の部- 44 -M. UsuiA. Shirayori硬度差の無い金属製軸部品とフランジ部品のパンチレス塑性流動結合法の開発硬度差の無い金属製軸部品とフランジ部品のパンチレス塑性流動結合法の開発薄井 雅俊* 白寄 篤**Review
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