FORM TECH REVIEW_vol31
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表4 水素吸蔵合金製造時の電力量(料金)比較 プロセス ボールミル ケース 材料 表3 水素吸蔵合金の生産速度比較 図7 水素サプライチェーンの将来像 図7に筆者が実現を目指す水素サプライチェーンの将来像を描いた.夏季の余剰の再生可能エネルギーを使用して水を電気分解し生成した(CO2発生を伴わない)グリーン水素を,摩擦攪拌装置で製造した水素吸蔵合金を充填し表4に新製法と従来法の電力量(料金)の比較を示す.数~数10 gの合金を処理する際に,摩擦攪拌の最大消費電力はボールミルと比較して2桁程度大きいものの,処理時間は2~4桁短いため,合金1kgの製造に要する消費電力量および電力量(料金)は1~2桁少ない(安い)推算結果が得られた.摩擦攪拌が水素吸蔵合金の新たな省エネ・低コスト製法となり得る見通しが示された. *) 摩擦攪拌は攪拌部削り出し工程含む プロセス ■■■■ ■■■■ ■■■■ ケース 材料 ケース■■ ■■合金 ■■基複合材 ■■■■■ ■■■■  ■■■■ 合金の質量 プロセス時間 ■■■■  ■■■■ 合金■■■■■の製造にかかる期間■ff日■■■ 合金生産速度■■ff■■■日■■■ 最大消費電力■ff■■■■消費電力量■ff■■■■ 合金■■■■■■製造時の電力量ff■■■■■■■ 合金■■■■■■製造時の電力量料金■■ *) 東京電力管内 事業所向け電力量料金 4.総括 ケース■■ ケース■  ケース■■ ケース■■ ■■合金 ■■基複合材 ■■■■■ ■■■■■■■■■ 合金の質量 プロセス時間 ■■■■  ■■■■ ■■■■■■■■■■ ■■■■■■■■■ ■■■■■■■■■ ■■■■■■■■■■■■ ■■■■ ■■■■■■ 摩擦攪拌 ボールミル ■■ ■  ■■ ■■■■■ ■■■■■■■ ■■■■■■■ 摩擦攪拌 ■■■  ■■■ ケース■  ケース■■ ケース■■ ■■■■■■■■■ ■■■■  ■■■■ ■■■■  ■■■■ ■■■■■■■■■■ ■■■■  ■■■■ ■■■■■■■■■■ ■■■■■  ■■ ■■■■■■■■■■  - 37 -■■■ ■■■ 5.今後の展望と課題 ■■■■■  ■■ ■■■■水素サプライチェーンの将来像 たタンクまたはカセットに貯蔵する.水素吸蔵合金カセットを既存の物流網を利用して店舗や家庭に設置した純水素型燃料電池に供給する実証事業が富谷市で行われた18).現在,燃料電池自動車を除く燃料電池システムの多くは天然ガス等を改質して得られる(CO2発生を伴う)グレー水素であるが,水素吸蔵合金を用いてグリーン水素のまま供給することで,脱炭素・水素社会の構築を推進する. ■■ ■■■系水素吸蔵合金の実用化に向けた開発課題 富谷市の事業で用いられた水素吸蔵合金はAB5系合金(A = La, MmまたはCa, B = Ni)であり,トラックでの輸送コストを下げるにはより軽量な合金が有利であるが,本研究が検討中のMg系水素吸蔵合金の水素放出温度は現状300℃前後である.触媒物質との摩擦攪拌合金化/複合化等を駆使し,水素放出温度を少なくともリン酸形燃料電池の作動温度(約200℃)まで下げることが,今後の重要な課題の一つである. ■■■■■■系水素吸蔵合金の実用化に向けた開発課題■図7のビルの地下室への定置用途(ゼロエネルギービル向け自立型エネルギー供給システム)では,軽量化よりもレアメタル使用量削減による低コスト化が求められ,Ti-Fe系水素吸蔵合金が採用され始めている19).溶製されたTiFe金属間化合物は高硬度で粉砕加工コストがかかる.また,TiおよびFe原料粉末のボールミルによるメカニカルアロイングには1 kgのTiFe粉末製造に50時間程度を要する20)(生産速度約0.5 kg/日)等の技術的課題があり,摩擦攪拌を活用することでこれらの課題解決を図る.その際には,TiやFeのような高融点材料の摩擦攪拌に必要な,1000℃を超える高温に耐えうるツール材料の探索・開発にも並行して取り組む必要がある. 2) 同FSP試料は100サイクル水素吸蔵/放出測定にお3) 今回の試算条件では,摩擦攪拌の消費電力量はボールミルより1~2桁程度少なく,生産速度は1~3桁程度速くなる見通しが得られた. 水素吸蔵合金の新しい製造法として,摩擦攪拌は下記の複数の観点から従来法(ボールミリング)に対する優位性が認められた. 1) FSPを施したMg合金ZK60試料は,HPT試料およびECAP試料と同等かそれ以上の水素吸蔵速度を示した. いても優れた長期耐久性を示した.

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