FORM TECH REVIEW_vol31
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図2 摩擦攪拌技術の応用展開NWNWVVWV突突きき合合わわさされれたた2枚枚のの板板100%90%80%70%60%50%40%30%20%10%0%201020112012201320142015201620172018201920202021削除しないでください■■■エネルギー安全保障をめぐる国際情勢1973年のオイルショックと電力需要の高まりを受けて,東欧のオーストリアでは,1978年に最初の原子力発電所の稼働の是非を問う国民投票が行われ,50.5%が反対,49.5%が賛成の僅差で否決された1).オーストリア国民党の政策担当責任者は,原発の安全性や放射性廃棄物の処理コストがどの程度か国民に十分説明できなかったことが否決の要因と指摘した.1980年代前半は原発稼働賛成派が反対派を上回る世論調査もあったが,1986年のソ連のチェルノブイリ原発事故以降,オーストリアは「反原発国家」の立場を確立し,2021年現在の電力構成は再生可能エネルギー(再エネ)が78%(水力60%,風力10%, バイオマス6%, 太陽光2%)を占めている2).物・原料資源的基礎の再生産の戦略的計画」の中で,ロシアが恵まれた天然資源を国家管理下に置き,内政・外交に役立てる意義を強調し,1999年に大統領に就任した4).フラの構築が世界的に急務となっている.■■ 電力の脱炭素化に向けた国内の動向2011年に東日本大震災に伴う原発事故を経験した日本では,翌年開始された再エネ固定価格買取制度の追い風を受け,2021年時点で全電力に占めるシェアが2割を超えた6)(図1).出力変動が大きい再エネを貯蔵し利用するには,現行の揚水発電に加え,水素蓄電も大規模化に有利な選択肢の1つである.現在実用または開発中の水素キャリアとしては,高圧水素(燃料電池自動車用),液体水素,アンモニア,メチルシクロヘキサン,水素吸蔵合金等があり,それぞれ性能や取扱い易さに一長一短がある7).写真位置1.まえがき1991年のソ連崩壊後,原発事故の影響緩和・社会保障の巨額な費用はソ連の一共和国であったウクライナが背負うことになった3).ウラジミール・プーチン氏は1997年に博士論文「市場関係形成の条件下における地域の鉱2020年,EUでは再エネ発電量が全体の38%に達し,化石燃料を抜いて主要電源となった2).2022年2月,ウクライナ送電会社はベラルーシ・ロシアの送電網を切り離し,ロシアからの侵攻を機に,3月にEUの広域送電網に接続し,安定な電力供給を確保した5).このような国際情勢の下で,外憂に翻弄されない持続可能なエネルギーイン水素吸蔵合金を用いた水素蓄電の応用例としては,自立型エネルギー供給システム8)がある.水素吸蔵合金が大規模,長期間,コンパクトに貯蔵できる特徴を生かし,夏場の余剰な再エネ電力で水を電気分解して得られた水素を水素吸蔵合金に貯蔵し,冬場に燃料電池の発電に使うことで,年単位の時間スケールで再エネの出力平準化を可能にしたゼロエネルギービルが実証された.大規模災害時に外部からの電源供給が断たれてもライフラインを維持できるBCP電源としての活躍も期待されている.■■■摩擦攪拌技術の応用展開図2に摩擦攪拌技術の応用展開を示す9).本研究では,摩擦攪拌接合(Friction stir welding; FSW)を改質技術に応用した摩擦攪拌プロセス(Friction stir processing; FSP) を高度化し,FSPおよび摩擦攪拌合金化/複合化(Friction stir alloying/compositing: FSA/C)を用いた水素貯蔵材料の高性能化・量産化技術の開発を進めている.図■■■日本の電源構成(発電量)の推移【【固固相相接接合合】】摩擦攪拌接接合合For ZF F F 新新幹幹線線ののぞぞみみアアルルミミ床床材材のの接接合合水水力力太太陽陽光光風風力力地地熱熱ババイイオオママスス原原子子力力天天然然ガガスス石石油油等等石石炭炭刃刃先先強強靭靭化化水水素素貯貯蔵蔵材材料料にによよるる蓄蓄電電((BCP電電源源)): 本本研研究究でで検検討討【【材材料料創創製製】】触媒物質FFor Z触触媒媒物物質質(金属,酸化物等)(金属,酸化物等)(金属,酸化物等)(金属,酸化物等)【【材材料料改改質質】】摩擦攪拌プロロセセスス摩摩擦擦攪攪拌拌合合金金化化//複複合合化化*大阪産業技術研究所 物質・材料研究部 主任研究員FFor ZF - 34 -Y. Kimoto摩擦攪拌技術を活用した摩擦攪拌技術を活用した水素吸蔵合金の高性能化・量産化水素吸蔵合金の高性能化・量産化木元 慶久*木元慶久Review

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