FORM TECH REVIEW_vol31
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図3は,燃焼合成後のセラミックス層におけるXRDによる相同定の結果である.Al2O3とTiCの両相が検出され,未反応物質は検出されなかった.未反応物質は,セラミックス層だけでなく,TiNi層でも検出されなかった.図4は,熱間爆発圧接後に切り出した小片の外観(図4(a))と,光学顕微鏡およびSEMで観察した断面組織(図4(b),(c))を示している.図4(a)から,セラミックス複合材,TiNi,銅の三層が波状界面を介して良好に接合していることがわかる.これに関して,2枚以上の金属板からなる爆発圧接材の接合界面は波状を示し,その波長と振幅は爆薬の爆1235 ℃であった.図3セラミックス層の相同定結果同図からは,反応の初期段階で燃焼合成の特徴である急激な温度変化が読み取れる.また,その最高到達温度は轟速度や金属板の飛翔速度に依存することはよく知られている5).そして,この波状界面が一種くさび形構造を成していることから,接合強度が高まることも過去に報告されている.また,燃焼合成の反応は不連続な燃焼波の伝播であるため,未反応領域と反応進行中の領域との温度差が激しくなる箇所が生じる,これに起因して表面または界面が波状になる場合がある.以上のことから,衝撃波と燃焼波の特性が同時に作用したことで,高い接合強度を持つと思われるセラミックスー金属クラッド材が得られたと考えている.一方,図4(c)には,界面付近にいくつかのボイ図4(a) 切断後のハイブリッド材料の外観,(b)光学顕微鏡および,(c)走査型電子顕微鏡による界面の観察像ド(矢印で示す)が見られる.これは,爆発加工時に燃焼合成で生成し,物質間に閉じ込められた気孔であると推測される.次に,セラミックス層の領域で測定した硬度値の結果を,実験条件に対応させながら表1に示す.硬度値は,爆薬量と飛翔板の材質に依存して変動していることがわかる.少量の爆薬(56 g)と銅板を用いた場合,すなわち,ゆるやかな加工条件の場合では硬度値が6.6 GPaであるのに対して,113 gの爆薬とステンレス鋼を使用した厳しい加工条件では13.7 GPaの値を示した.これはアルミナ焼結体18)の硬度値に相当する.この結果は,比較的多くの爆薬量とより剛性が高い材質の飛翔板を使用することで,セラミックス層の緻密化に効果があることを示している.さらに,硬度値はTime Window(TW; 燃焼合成の開始から爆薬の起爆までの時間)に依存していることも注目すべき結果である.図2に示したように,TWが10秒の時の反応生成物の温度は約1235℃となる.このTWにおける銅製の飛13.7 GPa であった.一方,反応生成物の温度が約800℃翔板を用いた加工ではセラミックス層の平均硬度値がとなる20秒のTWでは,硬度値は6.6 GPaに低下した.これらの結果は,反応生成物をより高温に保ち,比較的多めの爆薬量を用いて加工することで,セラミックスや金属間化合物を容易に緻密化できることを示唆している.次に,熱的特性における接合材の健全性を調べるため,表1に示したNo.2とNo.6の2種類の試験片を用いて高温から急冷する試験を50回施した.同試験の前後で得られたセラミック層の硬度値と界面の観察結果を比較することにより評価した.その結果,表1に示すように,急冷試験を50回行うと,硬度値はかなり低下した.これは,同試験が大気中で行われたため,複合セラミックス材料中の炭化チタンが酸化し,劣化が進行したためと考えられる.また,図5に示すように,急冷試験後のセラミックス層の一部にクラックが観察された.このクラックの発生も酸化に起因するものと考えられる.しかしながら,各層の急激な温度変化を受けたにもかかわらず,層間の剥離は見られDiffraction angle,2/degrees- 30 -

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