FORM TECH REVIEW_vol31
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図116061-T6/DP590鋼接合板の(a)HAADF-STEM像と電子線回折像,(b)Feマップ,(c) Mnマップ,(d)Alマップ,(e)Oマップ11)図106061-T6/DP980鋼接合板の(a)SEM像,(b)Feマップ,(c) Alマップ,(d) IQ(Image Quality)マップ,(e)IPF(Inverse Pole Figure)マップ,および(f)KAM(Kernel Average Misorientation)マップ10)板との接合界面が明瞭にわかる.図中には,波頭部分の内側にFeとAlの両元素が共に分布している領域が確認され,板厚方向に10μm程度の中間層を形成している事が分かった.図10(d)IQマップではIQ値の低い領域が中間層に対応しており,微細な結晶粒が形成されたことが示唆される.図10(e)IPFマップには,結晶粒の方位差を15度以上とした境界線(結晶粒界)を合わせて示す.白枠で囲った接合界面近傍は波状模様形成時の塑性流動が生じた領域であり,母材の粒径と比較すると,微細化している様子が分かり,接合界面に沿って1μm以下の結晶粒が観察された.結晶方位はランダムである.この組織形成は,局部溶解の際に急冷凝固したか,もしくは衝撃変形によって界面近傍でひずみの蓄積と加熱が生じ,再結晶化したことに起因すると考えられる.図10(f)のKAMマップは個々の測定点における隣接ピクセル間の結晶方位差の平均値を示しており,5度までのミスオリエンテーション値の分布を示している.KAMマップに示されるひずみの蓄積度から,接合時に鋼板側(固定板側)に10μm程度まで比較的多くのひずみが導入されたと考えられ,(e)と比較すると,結晶粒が微細な領域と一致している.電磁圧接や爆発圧着における異種金属接合界には,しばしば両元素からなる中間層が観察される.図11(a)に中間層近傍のHAADF-STEM像を示す.像のコントラストは原子番号Zの2乗に比例するため,この像から観察されるコントラストは,白い場合はFeであり,暗い場合はAlを意味する.また,中間層は,灰色を呈しており,両元素をともに含んでいると考えられるが,中間層には,コントラストの濃淡があり,内部では白と黒のコントラストが不規則に入り混じった組織が観察された.図11(a)中に白枠で囲った領域で調べた(b)Feマップ,(c)Mnマップ,(d)Alマップ,および(e)Oマップをそれぞれ示す.元素マップから,中間層はFe,MnおよびAlで構成されていることから合金化していると考えられる.元素マップからは,HAADF-STEM像において,より白いコントラストで示された領域において比較的Feが多く分布していることがわかり,Fe濃度はDP590鋼側が高く,6061-T6側では低くなる.つまり,中間層内に組成分布が生じていると考えられる.また,Oマップからは,接合界面や中間層内に濃縮は認められず,観察結果からは酸化物の存在は確認できなかった.中間層内に矢印で示した部分では,元素マップよりFeとMnが多く,かつAlが少ない部分であり,このことから,1μm以下のFeが中間層に存在していることもわかった.この中間層において,比較的Fe濃度の高いAおよび低いBの領域から得られた電子線回折(ED: Electron Diffraction)パターンをそれぞれ示す.得られたEDパターンからは,AではFeAl,BではFe2Al5およびFeAl3の回折波が観察され,中間層は主に金属間化合物で構成されており,部分的にFe粒子が混在していることがわかった.このことから,中間層は両金属板の成分を含んで合金化しており,部分的には組成が偏っていることからも急冷却が生じていると考えられる6).接合界面に観察される波状模様は爆発圧着等の衝撃力を用いた接合界面で観察される波状模様と同様のメカニズムで形成されると考えられる.電磁圧接は爆発圧着と比較すると衝撃力が弱い電磁力を用いた線接合法であるが,せん断力が接合板の接合界面に平行に負荷されるため,互いの板表面が塑性変形して,アンカー効果を生じるため,界面の接合強さの向上において好ましい組織形態である.接合条件は衝突速度が速い方が望ましい.従って,図6から分かるように,コイルと可動板はある程度の広い間隙長を必要とする.しかし,接合板がコイルからうける電磁- 26 -

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