が780MPaまたは980MPa級のDP鋼である.板の寸法は,Al合金板および鋼板を80×100×1.0mmとし,それぞれの板を圧延方向と垂直に電磁圧接を行った.放電エネルギーWは0.5~3.0kJとし,間隙長dを0.38~5.22mmに調整して実験を行った.図3(a)に6061-T6板とDP780鋼板の接合板(以後,接合板は6061-T6/DP780鋼接合板のように略記する.)の外観を,図3(b)にその断面写真をそれぞれ示す.接合界面の組織観察は接合部のシーム方向に垂直の断面図3(a)接合板の外観写真と(b)断面写真図4(a)に6061-T6/DP780鋼接合板の破断荷重と間隙長の関係を示す.Wは3.0kJ一定とした.接合部剥離した試料については白抜きで,母材破断した試料は黒塗りでその最大荷重を示す.また,図には6061-T6板の破断荷重を実線で示す.接合は間隙長dが1.00 mmから1.59 mmまで可能であり,dが1.59 mmを超えると未接合で不可能であった.d=1.00 mm~1.59 mmで作製した試験片について引張せん断試験を行った.d=1.00mmでは0.8kNで接合部剥離したが,d=1.17mm~1.42mmでは6061-T6板で母材破断した.さらにdを1.59mmに広げた接合条件の場合は0.4kNで接合部剥離を生じた.以上の結果から,d=1.17mm~1.42mmが適切な接合条件であり,6061-T6/DP780鋼接合板について母材破断となる強固な接合板の採取が可能だ図5(a)に6061-T6/DP780鋼接合板の断面BE(BackscatteredElectron)像を示す.上側が固定板(DP780鋼板)で下側が可動板(6061-T6板)である.電磁圧接では,可動板が固定板に衝突後,図中に示したコイルの中心線から接合端図4(a)6061-T6/DP780鋼接合板の破断荷重と間隙長の関係と(b) 6061-T6板における衝突速度と間隙長の関係10)図4(b)に6061-T6板における衝突速度と間隙長の関係を示す.Wは接合条件と同じ3.0kJである.図中には母材破断した接合板作製における衝突速度の範囲を破線で示す.間隙長d=1.17mm~1.42mmの適切な接合条件での衝突速度は430m/s~459m/sの範囲である.d=1.59mmで衝突速度は479m/s,d=3.11mmで531m/sへと速くなるが,接合板は接合部剥離および未接合である.つまり接合板の接合強3.実験結果に対して行った.組織観察は,走査型電子顕微鏡(SEM:JSM6510)を用いた.電子線後方散乱回折(EBSD: Electron Backscatter Diffraction)法による結晶方位解析については,走査型電子顕微鏡(SEM:JSM7800)を用い,OXFORD社製のAZtecHKL EBSD解析ソフトウェアにより行った.また,SEMに付設のエネルギー分散型X線分光器(EDS:Energy Dispersive Spectrometer)により元素分析を行った.SEMで観測できる亀裂の先端をそれぞれ接合開始点,接合終了点とし,その距離を接合長さとして測定を行った.接合強度の評価は接合板をJIS13B号(1/2縮小)形状に切り出し, 引張せん断試験により行った.とわかった.度および接合可否を衝突速度のみで判断できない.これまでに引張強度が高い2024-T3板と7075-T6板の接合および6061-T6板とDP590鋼板の接合において,母材破断する強固な接合板を得るには,速い衝突速度が望ましいことが知られている.衝突速度の増加は衝突圧力の増加を意味する.しかし,Fig.4(a)と(b)からは,6061-T6/DP780鋼接合板の場合,衝突速度が増加しても接合部剥離や未接合となることから,接合条件において他の要因を検討する必要がある.そこで,この原因を調べるために,接合部の組織観察を行った5).部側に向かって衝突点が移動し,ある位置から接合が始まる.従って,中心線に対してほぼ対称に,図中に白線で示- 23 -
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