図2 電磁圧接装置の断面模式図図1ハイテン化の推移1.まえがき■2.実験方法近年,地球温暖化防止の対策として,自動車,鉄道車両や航空機などの輸送機器の軽量化が注目されている.自動車の走行で排出されるCO2の排出量は駆動方法によらず車体の重量に比例する.従って,車体軽量化はCO2排出量削減には重点事項の一つであり,車体軽量化に対する取り組みが積極的に行われている.車体軽量化で最も積極的に取り組まれてきたのは,図1に示す予測のように,自動車部品への高張力鋼鈑(590~1490MPa)の適用である1).車体への高張力鋼鈑の適用により,衝突安全性が向上するとともに,板厚低減による軽量化も達成されている.今後も高張力鋼板を充分に使いこなした軽量化が進められていくと考えられるものの,部材の剛性を考慮すると,板厚低減にも限界がある.現行と比較して30%以上の軽量化が必要となった場合,部分的にアルミニウム合金(以下Al合金)を用いたマルチマテリアル化を視野に入れる必要がある.その場合,鋼とAl合金の異種金属接合技術が不可欠となる2).電磁圧接は電磁力により生じる衝撃力を利用した固相接合法であり,同種または異種金属同士の強固な接合が可能である3,4)そこで本研究は,電磁圧接によるDP780鋼板と6061-T6板の接合について,適切な接合条件を明らかにした後に,DP980鋼板と6061-T6板の接合を行い,その接合条件を検討した.作製した試験片について引張せん断試験により接合特性を評価した.また,作製した接合板の接合界面について電子顕微鏡を用いて組織観察を行い,その界面組織形成について考察した. ■■実験装置の概要図2に電磁圧接装置の断面模式図を示す.本実験ではE字形平板状ワンターンコイルを用いた.間隙を設けてコイルの上面に試料を配置する.電磁圧接ではコイルに大電流を流すことで可動板(下側)に上向きに電磁力が発生し,高速度で変形し,固定板(上側)に衝突してシーム状に接合される.コンデンサに充電した電気エネルギーは接合条件の1つであり放電エネルギーWと表記する.コイルにはクロム銅製の平板状E形ワンターンコイルを用いた.コンデンサ容量は400μF,周波数は33kHzとした.コイルにパルス大電流が流れると,コイル中央部の周囲には高密度磁束が発生する.この磁束が可動板に交差すると,磁束の侵入を妨げるように可動板内に渦電流が誘導される.ここで誘導された渦電流と高密度の磁束が交差して可動板内部に上向きの電磁力が発生する.電磁力を受けた可動板は高速度で変形,衝突して固定板にシーム状に接合される.従って,導電率の高い金属ほど渦電流の電流値が大きいことから,鋼板とAl合金板の接合においては,導電率の高いAl合金を可動板とした. ■ 供試材と組織観察供試材として可動板に6061-O板または6061-T6板を用いた.一方,固定板にはDP780鋼(JSC780Y)板またはDP980鋼(JSC980Y)板を用いた.JSC鋼はフェライト相とマルテンサイト相の2相組織であり,それぞれ引張強さ*千葉大学 大学院 工学研究院 教授- 22 -T. Itoi電磁圧接によるハイテン鋼とアルミニウム電磁圧接による超ハイテン鋼板とアルミニウム合金板との高速接合合金接合板の作製とその接合条件糸井 貴臣*糸井貴臣Report
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