表1実験条件図1 矩形バイト1.緒言*東北大学 大学院工学研究科 機械機能創成専攻 准教授高品位微細構造体の創成れぞれの現象を解明するとともに,それらを解決可能な加工プロセスの提案を目的とした. ・■実験条件本章ではまず基礎実験として,図1に示す形状を有する矩形バイトを用いて超精密切削を行い,微細構造体創成時に発生する欠陥(主にバリ)の発生状況を確認した.実験装置にはナガセインテグレックス社製の超精密微細形状加工機MIC-300を使用した.本加工機はX,Y,Z軸の最小位置決め分解能が0.1 nm,B,C軸分解能が0.00001°の性能を有しており,同時5軸制御加工を行うことが可能である.この仕様により,本加工機は本研究で対象とするサブマイクロ~マイクロメートルオーダの微細構造体創成に十分な性能を有している.また,被削材にはP濃度10 wt%のNi-Pめっきを使用した.表1に切削実験における基本的な条件,表2に同実験の切込み条件を示す. ・ 矩形平行溝構造体における欠陥発生状況図2に矩形平行溝構造体に発生した欠陥の観察結果を示す.同図より,総切込み深さd=5μmの構造体では主に欠けが発生し,バリに関しては稜線部に微小なバリが確認される程度である.それに対して,d=10,15,20μmの矩形平行溝ではいずれも構造体上面の稜線部に明確なバリが発生していることが確認できる.2.超精密切削による微細構造体創成切削速度雰囲気切削環境被削材工具材料工具すくい角キーワード:レーザプロセッシング,超精密切削,デバリング,微細構造体,機能性表面製品の設計において材料の選択や形状は重要であるが,それと同等に表面機能が製品の性能に寄与する割合も大きい.最近では表面加工技術の進歩が著しく,それらによって表面を高機能化し,製品としての性能・機能を向上させることを目的にした研究が盛んに行われている1).とくに光学製品や光学素子の開発では,表面に微細な構造体を創成することにより,光学機能を向上させる,あるいは別の特殊な機能を発現させることが可能になる.例えばサブミクロンオーダの微細構造体を表面に創成した場合には,その構造体の存在によって,強い光学異方性や波長依存性,あるいは共鳴現象による電磁場の増強や狭い領域への光閉じ込め等,様々な光学現象が発現する2).そのため,それらの現象を理解し,それらを効率的かつ効果的に発現させる構造体を創成することが重要になる.微細構造体による高機能化を応用した光学素子に関して,一部ではすでに実用化が進められている.その中で,超精密切削によって微細構造体を創成する方法は,形状自由度や材料選択性などの様々な利点から適用範囲は広範である3),4).ただしその一方で,この方法で微細構造体を創成した場合には,欠けやバリといった欠陥の発生が大きな課題となる.とくに今後さらに構造体の微小化,高精度化が期待される中で,この欠陥をいかに除去するかは大きなポイントになる.本研究は,著者らが提案するレーザ援用サイマルプロセッシング(LAS)を適用し,この課題の解決を狙ったものである.ここでLASとは,局所加熱切削の一種であるレーザ援用切削を,レーザパラメータおよび切削条件を制御することにより微細構造体創成時の欠陥抑制に適用させたものである.著者らはこれまでに,通常の超精密切削と比較してLASにより微細構造体上に生成する欠陥のうち,欠けを抑制可能であることを明らかにし,本手法の有効性を示している5),6).ただし現段階では,(Ⅰ)バリ及び欠けのそれぞれの生成メカニズムの違いから,欠けの抑制は可能となっているが,バリに対してはそれを抑制する適切な条件の選定には至っていない.また,(Ⅱ)レーザ照射を行うことでもたらされる悪影響についても検討の余地が残されている.そこで本研究では,(Ⅰ),(Ⅱ)のそ東北大学大学院工学研究科機械機能創成専攻(平成 ■年度一般研究開発助成■■■ ■■■ ■)准教授水谷正義キーワード:レーザプロセッシング,超精密切削,デバリング,微細構造体,機能性表面M. Mizutani2000 mm/min23°CオイルミストNi-P (P10 wt%)単結晶ダイヤモンド0°100o先端幅5 μm- 81 -レーザ照射と超精密切削のサイマルプロセッシングによるレーザ照射と超精密切削のサイマルプロセッシングによる高品位微細構造体の創成水谷 正義*Report
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