図2レーザー転写技術の応用例.図1レーザー転写法による1.レーザー転写の基礎と応用*国立研究開発法人産業技術総合研究所 電子光基礎技術研究部門 先進レーザープロセスグループ 研究グループ長~微粒子からタンパク質担持マイクロチップまで~2.レーザー転写による物質デリバリーキーワード:レーザー転写,微粒子,マイクロチップレーザー,光スタンプ,タンパク質担持マイクロチップレーザー転写法は,一般にレーザー誘起前方転写(Laser-Induced Forward Transfer, LIFT)とも呼称されることが多く,レーザーアブレーション等のレーザー誘起現象による推進力を利用して,ドナー物質を別の基板に移す手法である.これまでに報告されているドナー物質は,金属[1,2],半導体[3-5],酸化物[5-7],銀ナノインク[8-10],グラフェン[11],バイオインクやタンパク質などのバイオマテリアル[12-16]と多様なことが魅力の一つである.産総研では,主に2種類のレーザー転写法を開発している(図1).どちらの場合も,移す対象となるドナー物質は透明キャリア上に調製される.キャリア側からレーザーパルスを照射,キャリア/ドナー界面で光吸収が起きる結果,レーザーアブレーションなどの過渡的なレーザー誘起現象に至り,これを推進力としてレーザー照射部のドナーが対向配置されたレシーバー上に射出・堆積される.レーザー誘起現象において,物質が瞬間的・局所的に溶融する場合,図1(a)に示すような微小な溶融液滴の射出・堆積が起こる.これを我々はレーザー誘起ドット転写(Laser-Induced Dot Transfer, LIDT)法と呼び[2,4,5],直径百ナノメートルから数マイクロメートルのいわゆるナノドット・マイクロドットの2D・3Dプリンティングが報告されている[1,2,4,5].この手法の魅力は微細化であり,集光径より一桁ほど微小なドットを描画することも可能となる[4].対照的に図1(b)に示す手法では,ドナー物質への熱影響を最小化し,膜形状・特性を維持した状態で膜転写を実現する.国立研究開発法人産業技術総合研究所電子光基礎技術研究部門先進レーザープロセスグループ(a)ナノ/マイクロドット描画と(b)膜転写.研究グループ長奈良崎愛子(平成 ■年度重点研究開発助成■課題研究■■■ ■■■ ■ )LIDT法を用いると,インクジェットのように微細化に伴うノズルの詰まりが問題とならず,原理的により微小な粒子(以下,ドット)を描画可能である.図3にLIDT法でSiウェハに描画したFeSi2マイクロドットアレイの(a)SIMイメージとFIB加工により形成した断面試料の(b)TEMイメージを示す.直径1.9μm,高さ1.5μmの底面にテラス構造を有する擬似球状構造が,高い位置精度で堆近年ではレーザー転写の応用として,金属,導電性酸化物や銀ナノインク等の配線描画やチップの配列積層によるエレクトロニクス応用に加え,他技術では難しい高粘性バイオインクや細胞の2D・3Dプリンティングによるバイオ・医療応用[12-16]なども注目を集めている(図2). ・■レーザー誘起ドット転写ff■■■■■法によるナノ・マイクロドット描画積されている.この結果から,レーザー集光スポットに局所的・過渡的に溶融部が形成,フェムトリットル程度の単一液滴が射出される.さらに対向基板上へ液滴の状態で堆積が起こり,基板上で固化することで,高い位置精度と密着性でマイクロドット描画が実現していることを示唆している(図1(a)).キーワード:レーザー転写,微粒子,マイクロチップレーザー,光スタンプ,タンパク質担持マイクロチップA. Narazaki- 75 -〜微粒子からタンパク質担持マイクロチップまで〜レーザー転写による物質デリバリーレーザー転写による物質デリバリー奈良崎 愛子*Report
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