FORM TECH REVIEW_vol30
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図1複合構造作製のための実験構成図図2作製構造の導電性評価。(a)金薄膜のスパッタリング、(b) レーザアブレーションによる金電極の作製、(c) 二つの金電極に跨る複合細線構造の作製、(d) 作製細線構造の導電性測定1.研究の目的と背景2.■■■■と金属の複合構造作製*慶應義塾大学 理工学部 准教授M. Terakawaキーワード:フレキシブル材料,金属,導電性、レーザ誘起グラフェンフレキシブルエレクトロニクスの研究分野では、ポリジメチルシロキサン(Poly(dimethylsiloxane)、PDMS)等の伸縮性材料に導電性微細構造を組み合わせる研究が相次いでいる。これまでに、電極基板を用いた電解重合による導電性高分子電気回路の印刷、転写印刷による金属マイクロ構造作製、半導体プロセスをもとにした金属薄膜微細パターンの作製、等の方法により、伸縮性材料の表面に金属微細構造を作製できることが報告されている。導電性と伸縮性を兼備させることができれば、例えば生体と接するデバイスに用いることで炎症が軽減されるといった利点が得られ、軽量・柔軟性・生体適合性に優れたフレキシブルエレクトロニクスデバイス、特にウェアラブルデバイス、体内埋込医療機器の実現が期待できる。レーザは微小領域にエネルギーを集めることができるため、レーザビームを走査することにより恰もペンで描くように材料の加工もしくは改質を行うことができる。非接触処理であるため材料変形も小さく、屈曲・伸張可能なフレキシブル材料もしくはエラストマーを扱う際に利点が多い。本稿では、超短パルスレーザを用いてマイクロ~ナノスケールの任意の形状の導電性構造を直接描画する技術として、多光子過程による光還元と光重合を同時誘起することで導電性微小構造を作製する方法と、高分子材料の炭化ならびに黒鉛化による導電性構造作製方法について、著者らの研究成果を紹介する。前者では、ホスト材料中に金属イオンを分散させ、近赤外のフェムト秒レーザを集光照射する。レーザの集光点において金属イオンが還元され、金属の三次元構造が作製されると同時に、金属構造周囲では光重合により高分子材料が覆うように形成される。後者では、高分子材料へのレーザ照射により光乖離と熱分解が生じて導電性材料が生成する。いずれも伸縮性の支持体と導電性材料から構成される構造を作製することができる。エラストマーであるPDMSと銀イオンの混合溶液にフェムト秒レーザを照射することでPDMSと銀の複合細線構造の作製を試みるとともに、作製構造の圧力センシングへの応用を試みた(1)。慶應義塾大学理工学部准教授寺川光洋光硬化性PDMSとヘキサンに溶解させた安息香酸銀を混合して溶液を調製した。図1に複合構造作製のための実験構成図を示す。対物レンズ(開口数0.4)を用いて集光したフェムト秒レーザパルスを二枚のカバーガラスに挟み込んだ混合溶液に照射した。出射レーザパルスの中心波長は522 nm、パルス幅は192 fs、繰返し周波数は63 MHzである。対物レンズのz軸方向の焦点位置はステージ上に設置したカバーガラスと混合溶液の境界面となるようにした。CMOSカメラにより構造作製を実時間観察した。レーザパルス照射後、未反応溶液をテトラヒドロフランにより除去した。キーワード:フレキシブル材料,金属,導電性、レーザ誘起グラフェン- 70 -レーザ直接描画によるフレキシブル導電性構造の作製レーザ直接描画によるフレキシブル導電性構造の作製寺川 光洋*Report

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