FORM TECH REVIEW_vol30
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1.研究の目的と背景*北海学園大学 工学部 教授2.実験方法キーワード:レーザー誘起水熱合成、プラズモン、酸化亜鉛水熱合成法は、熱水の存在下で行われる化合物の合成・結晶成長法であり、粒子やロッド、結晶薄膜等、様々な形状・サイズの物質の合成が行われている。近年、この合成法の新たな方法として、■■らのグループを中心にレーザーによる局所加熱を用いた酸化亜鉛や酸化チタンナノワイヤ構造の作製に関する研究が精力的に報告されている■■■ ■。本手法は、光吸収体上にレーザーを集光し、局所的に加熱したスポットにおいて水熱合成を行う方法であり、(1)レーザー照射による局所加熱により、照射スポットでのみ反応を誘起できる、(2)レーザーによる局所加熱を行うため、加熱条件の制御(照射パワーや時間)が容易となり、結果として構造の制御が容易となる、(3)水熱合成が可能な材料、照射レーザーを吸収する基板であれば本手法を適用出来る、といった利点を持つ。一方、金属ナノ構造中に誘起される局在プラズモン場は、回折限界を超えたナノ領域に入射電場よりもはるかに強い電場を誘起するという特徴を持つため、局在場中にあるナノ物質との強い相互作用を引き起こす。このため、ナノサイズの低しきい値レーザーやナノリソグラフィ、増強ラマン散乱を利用したセンサー応用、光電変換等のデバイス応用が盛んに報告されている■■■■■。特に近年では、これらの応用に向けた重要な現象として、プラズモン場と分子間の強結合状態の実現に関する報告が様々な金属構造や分子・原子を用いて行われている。しかし、相互作用を最大化するためには、ナノスケールの局在プラズモン場中にナノ発光・吸収体を適切に配置する必要があるが、高い精度で狙った位置にナノ材料を配置する事は極めて困難である。この様な問題に対し、プラズモン場の急峻な電場勾配を利用したプラズモン光トラッピングによる分子や原子の補足が試みられており、プラズモン場の分布を反映して捕捉力が決まる事から、高強度の局在場スポットに分子を送り込む方法の一つとして注目を集めている■■■■■。ただ、ブラウン運動等の熱揺らぎとの兼ね合いとなり、望む構造を望む場所にだけ配置する事は難しい。また、局在場を利用した強結合状態の報告例が存在するものの、(平成27年度一般研究開発助成AF-2015206)北海学園大学工学部教授藤原英樹多数の金属ナノ構造上に沢山の分子を塗布あるいは分散する事で、確率的に良い配置を取るものを選択して強結合状態の測定を行っている■■■。このため、プラズモン場とナノ発光体間の高効率結合を実現するためには、簡便かつ制御可能な方法で金属ナノ構造のプラズモン場中にナノ発光体を配置する必要がある。本研究では、局在プラズモン場の励起に伴い発生する熱に注目し、ナノメートルサイズのシステムの効率的かつ局所的な熱源として活用することで、金属ナノ構造中に選択的にナノサイズの発光体を作製する技術を開発する。このプラズモン場を介した水熱合成(プラズモン支援水熱合成)により、ナノスケールのプラズモン場に選択的に構造を作製することが可能となり、金属ナノ構造とナノ発光体が結合したプラズモン―ナノ発光体のハイブリッド構造を意図的に作製できると期待される(図■)。本論文では、室温でも励起子状態が存在する酸化亜鉛(■■■)を発光体として用い、プラズモン―ナノ発光体の強結合状態の実現を目指し、レーザー照射による簡便な方法でナノスケールの金ナノ構造中の最適な位置に選択的に発光体を合成することに成功した結果について報告する■■■■。図1金属ナノ構造中に誘起される局在プラズモン場を利用したレーザー誘起水熱合成.プラズモン場中に選択的にナノ発光体を作製する. ■■金ナノ構造の設計と作製プラズモン場を誘起するための構造として、広く使用されている金ナノバー構造、金ナノダイマー構造、および、金ナノバタフライ構造の3つの構造の局在場分布および熱分布の計算を行った。いずれの構造もガラス基板上の金ナノ構造を仮定し、水中で波長■■■■■■■に光共鳴キーワード:レーザー誘起水熱合成、プラズモン、酸化亜鉛- 66 -H. Fujiwaraプラズモン場を用いたレーザー水熱合成によるナノ発光体の最適配置プラズモン場を用いたレーザー水熱合成によるナノ発光体の最適配置藤原 英樹*Report

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