FORM TECH REVIEW_vol30
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図3■空冷材および水冷材の室温および500℃における準静的引張試験により得られた応力ひずみ曲線. ■■■■ (a,b)およびSEM二次電子像(c,d). ■そこで本研究では,温間域において高速度での引張試験が実施可能な実験系を構築し,温間テンプフォーミング等による微細粒組織化など,塑性加工を利用して組織制御された低合金高強度鋼の塑性変形特性(とくに絞り)の温間域ひずみ速度依存性と金属組織の関係を明らかにすることを目的とした. 2.実験方法 ■ ・■■実験装置の概要■■材料の高速変形特性は,静的試験とは異なり慣性力の影響を無視できないため,その影響を考慮した試験機系が必要になる.従来の高速変形特性試験で,最も広く用いられている方法は,ホプキンソンバー法と称される大きな長さを有する入力棒と出力棒を用いる方法である ■.この方法により種々の金属材料の高速変形特性が調査されている.しかし,室温以上の高温における当該試験機系の適用は,試験機系を構成する材料の弾性率温度依存性の問題などから,その例は極めて限定的である.そこで本研究では、ホプキンソンーコルスキーバー法をベースとして,高温高速試験を実現できる試験機系の構築に取り組んだ.■■本研究で構築した試験機系は図1に示すような構成を有している.既存の縦型スプリットホプキンソンバー試験機に対して,電気炉と冷却機構およびレーザー変位計を設置することにより大気中の高温高速引張試験を実現した.主な特徴は以下の通りである.■・水冷装置:■入力棒および出力棒に水冷装置を新設し,加熱部以外の温度が常温となるようにした.水冷装置は鋼片に直径■■mm程度の直線穴を切削加工し,その内部にチラーから供給される循環水が流れるだけの簡単なものである.水冷装置の設置により,出力棒図2■空冷材(a,c)および水冷材(b,d)のEBSD測定結果に取りつけられた荷重検出用のひずみゲージ設置部は常に常温に保つことができる.一方で,出力棒に取り付けた冷却装置は高速打撃を与える際も外さずそのままにするため,これに起因する入力波形に乱れが生じる可能性があることが弱点である.■・レーザー変位計:試験片のゲージ部両端に直接取り付けた反射板を利用して,二台のスポットレーザー変位計により試験片変位を高サンブリング速度で計測できるようにした.レーザー変位計を用いるために,電気炉体(耐火物)と水冷装置に■mm幅程度の小さな溝を加工し測定ビームパスを確保した.加工幅を必要最低限としたため,電気炉内部の保温状態に溝加工の影響はほとんど無かった.また,レーザー変位計の応答遅れは装置のマニュアルに記載されている情報および室温における応答状況から補正した.(今回の研究における高速変形測定条件では応答遅れは■■■m■■■であった.)■・試験片:試験片は直径■mm×長さ ■mmのゲージ部を有する丸棒試験片とした.丸棒試験片とすることにより,加工性の重要な指標となる絞りの測定が可能となる.■なお図には示していないが,試験片の平行部近傍に熱電対を設置して測定した温度を試験温度とした.また,荷重(出力棒ひずみゲージ)およびレーザー変位計のデータはアナログ信号として単一のデータロガーにより高速サンプリングした.■■ ・ ■測定試料および試験条件■■0.15wt%C-0.3%Si-1.5%Mn-bal. Feの化学組成を有す - 57 -

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