FORM TECH REVIEW_vol30
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キーワード:高強度鋼,高速変形,温間変形,金属組織,引張試験,絞り 1.研究の目的と背景 ■環境問題や世界各国における技術力の向上といった社会情勢変化に応じて,鉄鋼材料の開発研究競争は激化している.日本では加工・熱処理による材質改善に関する研究が種々の大型国家プロジェクトとして展開され,■■■℃近傍の温間域加工の利用や.温間テンプフォーミングと称される塑性加工プロセスによる金属組織の異方性制御を通した靭性向上の達成など,新しい組織制御指針に基づく新素材が生みだされている■).■■競争力の高い新素材であるためには,単に高強度を有するだけでは不十分であり,延性などの塑性変形特性が優れていることも求められる.特に近年ではサーボプレスが普及し,高速化に加えて変形速度の精密制御が可能となっている.また,ホットスタンプに代表される二次加工時の加熱を利用した金属組織の作りこみも開発・実用化されてい図1■高温高速引張試験機のレイアウトを示した模式図(a)と電気炉周辺の実物外観(b) 物質・材料研究機構■構造材料研究拠点■主幹研究員■上路■林太郎■(平成 ■年度■一般研究開発助成■■■■ ■■■■■■) *物質・材料研究機構 構造材料研究拠点 主幹研究員キーワード:高強度鋼,高速変形,温間変形,金属組織,引張試験,絞り- 56 -組織設計指針の確立■る.こうした塑性加工プロセスの技術革新の優位性をさらに引き出すための視点が新素材研究に必要である.特に,二次加工において変形速度や温度制御が積極的に利用されつつある状況の中,新素材の成形性調査もあって然るべきである.■■前述の温間テンプフォーミングのような新しい組織設計指針により得た新素材の温間域変形挙動は,これまでの炭素鋼とは異なる挙動を示す可能性がある.しかし,そもそも鋼の高速塑性変形研究は降伏点近傍の強度のひずみ速度依存性に終始することが多く,加工性の指標となる絞りなどの報告がほとんど見当たらないのが現状である.そのため,高速温間塑性変形特性と材料組織との相関を明らかにできれば,これまで知られていない高強度鋼に優れた高速温間塑性変形特性を付与する組織設計指針が得られるはずである. R. Ueji高強度鋼に優れた高速温間塑性変形特性を付与する 高強度鋼に優れた高速温間塑性変形特性を付与する組織設計指針の確立上路 林太郎*Review

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