メンタイト境界22)にトラップしたと考えられる。TM鋼の強度は,塑性変形中の残留オーステナイトγRのマルテンサイト変態によって確保される。一方,HS1鋼の強度は母相の転位密度の上昇,およびマルテンサイト母相内の多 )1-s ]1-ces mpp( etar noitpmropsepd[ negordyH TM鋼とHS1鋼と比べ極端に少ないことが分かる。これはHS1鋼の転位密度が高いこと,およびセメンタイト析出量が多かったことに起因したと考えられた。そのため,HS7鋼は水素チャージの有無に関わらず母材部で破断した。 Fig. 19(a, d)にTM鋼の母材部,Fig.19(b, e)にHAZ部,およびFig. 19(c, f)に溶融部断面のEBSD解析結果(IPFマップ,および相分布マップ)をそれぞれ示す。母材部はマルテンサイト母相(青色)と微細な残留オーステナイトγR(赤色)からなる(Fig.19(d))。一方,スポット溶接部はスポット溶接時に母材が溶融し,急冷されて固溶したことにより非常に微細な組織を有した(Fig. 19(f))。また, HAZ部は組織が粗大化したように見えた(Fig.19(e))。しかし,母材部,スポット溶接部,HAZ部とも残留オーステナ イトγRの量に大きな差は確認されなかった。 etar noitprosednegordyH 0 (a) (b) 0.00100.00080.00060.00040.00020.0000(c) 5 μm (d) 250 μm 300- 53 -5 μm 250 μm 量のセメンタイト析出によって確保されたと考えられる。したがって,HS1鋼は転位上,およびTM鋼よりも多量に存在するマルテンサイト母相/セメンタイト境界に多くの水素がトラップしたためにHS1鋼の水素量が高かったと考えられた。また,HS7鋼の拡散性水素量は0.4 ppmで, Fig. 17. Scanning electron micrographs of fracture surface in HS1 steel. ((a) high magnification (×2000) of base metal, (b) low magnification (×47) of (a), (c) high magnification of base metal with hydrogen, (d) low magnification of (c)). Fig. 18. Typical hydrogen desorption curves for TM, HS1 and HS7 steels. HS12.9 ppmTM2.0 ppmHS70.4 ppm100200Temperature (℃)以上のことより,母材試験片における水素チャージ後の最大応力TS-H=1126 MPaと引張強さTS=1532 MPaとの差(ΔTS-H=TS-H-TS=-406 MPa)は,ホットスタンプ鋼(HS1鋼)のそれ(ΔTS-H=-744 MPa)と比べ優れた。これは,TM鋼の残留オーステナイトγRが水素脆性による強度低下を抑制したことに起因したと考えられる(Fig. 11)。TM鋼の溶接試験片における水素チャージ後 の最大応力TS-WHと最大応力TS-Wとの差(ΔTS-WH= TS-WH-TS-W=-521 MPa)とHS1鋼のそれ(ΔTS-WH=-577 MPa)の影響は同程度であった。これはスポット溶接部の
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