VH VH面は浅く底が平らなディンプルが支配的で,通常のディンプルではなく,脆性的なディンプルを形成したと考えられる。以上のことから,TM鋼はHS1鋼と比べ,水素脆化の影響が小さく,TM鋼の水素脆化はスポット溶接の影響と同等の強度を示した(Fig. 16)。TM鋼は母材試験片,水素チャージ後母材試験片のどちらでもディンプルが見られた。しかし,水素チャージ後母材試験片のディンプルは浅く平らなディンプルが支配的となっていた。よって,水素チャージ後の母材試験片では,擬へき開破壊となり,脆性破壊したと考えられる(Fig.16(c))。 Fig. 14. Vickers hardness (HV) distribution for HS1 steel13). Fig. 16にTM鋼,Fig. 17にHS1鋼の破面写真を示す。 Fig. 16より,TM鋼は水素の有無にかかわらずディンプル破面になった。しかし,水素チャージした母材試験片の破800700600500400300200100-10-5(a) (b) 0505x (mm)鋼材の強度が上がるほど転位密度が高くなることから,母材強度レベルが高いTM鋼の方が,拡散性水素量が大きくなることが考えられた,しかし,TM鋼の拡散性水素量は HS1鋼より小さくなった。TM鋼では水素は主に旧オース テナイト粒界やラス境界19),転位上20),残留オーステナイトγR中,または残留オーステナイトγR /マルテンサイト境界21)に,HS1鋼ではTM鋼と同様に旧オーステナイト粒界やラス境界,転位上のほかに,マルテンサイト/セ Fig. 15. Vickers hardness (HV) distribution for HS7 steel13). Fig.18に,TM鋼,HS1鋼,およびHS7鋼のタブ板(20× 20×1.4 mm)に水素チャージを実施し,それらを100 ℃/h で昇温脱離分析した水素放出曲線を示す。TM鋼の拡散性水素量は2.0 ppmで,HS1鋼の2.9 ppmと比べ少ないことが分かる。ここで,水素は転位にトラップされることと,800700600500400300200100HS110-10(c) 5 μm (d) 250 μm - 52 --5x (mm)HS7 105 μm 250 μm Fig. 16. Scanning electron micrographs of fracture surface in TM steel. ((a) high magnification (×2000) of base metal, (b) low magnification (×47) of (a), (c) high magnification of base metal with hydrogen, (d) low magnification of (c)).
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