Table 4に供試鋼の溶接試験片の機械的特性を示す。ここで,母材試験片の引張強さTSと全伸びTEl,溶接試験片の引張強さ(最大応力)TS-Wと溶接試験片の全伸び(破断伸び)TEl-Wより,引張強さの差ΔTSをΔTS=TS-W-TS,全伸びの差ΔTElをΔTEl=TEl-W- TElとそれぞれ定 +0.0056Alγ+0.0220Nγ ・・・・・・・・・・・・・(1) ここで,Mnγ,Alγ,およびNγはオーステナイトγ中の元素濃度(mass%)を表す。本研究では便宜上,それぞれの合金元素の添加量を用いた。 Fig. 2に水素チャージ引張試験を示す。水素チャージには,陰極チャージ法を用いた。定電流装置により試験片をカソード分極し,水素チャージを行った。対極にはPt線を用いた。3 wt%のNaCl水溶液に,5 g/Lのチオシアン酸アンモニウムNH4SCNを添加した水溶液400 mLを水素チャージ水溶液として用いた。電流密度10 A/m2 ,チャージ時間48 hとした。水素チャージ領域は,マスキング処理後の試験片タブ板溶接部の両面(20 mm×20 mm×2),および両側面(20 mm×1.4 mm×4)とした。 Ceq = [C] + [Si] /24 + [Mn] /6 + [Cr] / 5 ・・・・・・・(2) が拡散性水素であり,それ以上の温度で放出される水素は非拡散性水素とされる。水素脆性に寄与するのは拡散性水素であるため,拡散性水素量のみを求めた17)。 3・1 組織と機械的特性 Table 1. Chemical composition of steels used (mass%). steel TM HS1, HS7 Si Mn C 0.22 1.51 1.51 0.020 0.21 0.003 0.22 1.21 0.038 0.25 0.004 - Fig. 1. Geometry of spot-welded specimen13). 引張試験には,母材引張試験片(母材試験片,板幅:20 mm,平行部の長さ:60 mm,標点間距離:50 mm),およびスポット溶接引張試験片(溶接試験片, タブ板:20×20×1.4 mm)1)を用い,インストロン型引張試験機によりクロスヘッド速度1 mm/min(ひずみ速度2.8×10-4 /s)で行った(Fig. 1)。ビッカース硬さ試験には,ダイナミック微小硬度計(荷重98.1 mN,保持時間5 s)により,鋼板の重ね面からt/4= 0.35 mm 鋼板内側の位置にて,鋼板表面にx=0.1 mm間隔に平行方向の硬さ分布を測定した。 水素量の測定には,昇温脱離分析(TDS)を用いた16)。水素チャージ引張試験のときと同様の水素チャージ液,電流密度で48 h,水素チャージした試験片を昇温速度100 ℃/hにて800 ℃まで加熱した。標準リークガスを用いて校正し,放出水素分圧を水素放出速度に換算した。水素放出速度を時間積分し,試験片重量で除すことで累積水素量として求めた。室温から約300 ℃までに放出される水素Ti Cr Electrode cap Cu-Cr DR16×60, 40R 3.実験結果および考察 Fig. 2. Appearance of tensile test after hydrogen charging. Fig. 3に供試鋼のミクロ組織SEM写真を示す。Fig. 3(a) はTM鋼,Fig. 3(b)はHS1鋼,およびFig. 3(c)はHS7鋼のミクロ組織である。3 %硝酸エタノール溶液腐食により,TM鋼はマルテンサイトと残留オーステナイトγR (γRの体積率fγ=1.52 vol%,残留オーステナイトγR中の炭素濃度Cγ=0.79 mass%),HS1鋼はマルテンサイト,HS7鋼は焼戻しマルテンサイトの組織からそれぞれなる。TM鋼とHS1鋼 はマルテンサイト母相を有するが,HS1鋼の比較的幅広なマルテンサイトラスにはTM鋼よりも多くのセメンタイトが析出したことが確認された。 Table 3に供試鋼の母材試験片の機械的特性,および炭素当量Ceqを示す18)。炭素当量Ceqは溶接性を示すパラメータであり次式(2)より求め,0.47~0.58 mass%の範囲である。ここで,[C],[Si],[Mn],および[Cr]は含有量(mass%)を示す。 H charging solution B - 47 -Specimen Table 2. Condition of spot welding. Electrode Welding time force 3.0 kN (0.25 MPa) (20 cycles/60 Hz) Water jacket 50 mm Welding current (I) 333 ms 6.5 kA aγ=3.5780+0.0330Cγ+0.00095Mnγ
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