(1)IQマップによる評価から,小傾角粒界の導入は,画像中央の中立軸部から距離が離れた圧縮側および(3)KAMマップによる評価から,納入材の180°の状態でも0.5°までのKAM値におよそ0.7の面積分率が分布していることがわかった.この上で曲げ変形が加わると,140°より鋭角の90°の間で特に圧縮側と引張側にKAM値の高い領域が現れた.(4)GRODマップによる評価から,110°,100°,90°で圧縮側表層部および引張側表層部に粒内方位差が大きい結晶粒が見られた.IPFとGRODの同一箇所の比較では,ある特定方位が優先して結晶回転している図3(5)ODFマップによる評価から,納入材および曲げ変形中にα-fiberおよびγ-fiberを示さなかった.納入材では(110)[1-11]と(113)[-1-21]に弱く集積していた集合組織が,最終的に90°曲げた段階では,(110)[1-11]の集積が(331)[2-33]方向に移動し集合方位変化した.(113)[-1-21]の集積は強さを増しながら90°曲げで最終的に(113)[-3-32]へ移動した.図4同一箇所のIPFとODF比較(100°圧縮側)4.結言謝辞参考文献集積することがあるが,ここでの納入材および曲げ変形中ではこれらの代表的な集合組織は示さなかった.納入材では(110)[1-11]と(113)[-1-21]に弱く集積していた集合組織が,曲げ変形とともに(110)[1-11]の集積が強くなった.最終的に90°曲げた段階では,(110)[1-11]の集積が(331)[2-33]方向に移動し集合方位変化した.(113)[-1-21]の集積は強さを増しながら90°曲げで最終的に(113)[-3-32]へ移動した.本研究では,SPCC材多結晶材に対して曲げ角度の変化に対応した集合組織の測定と結晶方位解析を行った.今回得られた知見は以下のとおりである.180°(納入材)のKAM値分布引張側それぞれの表層部で顕著となった.曲げ角度の増加とともに,小傾角粒界が増加して大傾角粒界が減少していることが分かった.この両者の割合が逆転するのは,曲げ角度130°と140°の間であった.(2)IPFマップによる評価では,曲げ角度の増加にともなって主だった変化は見られなかった.わけでなく,圧縮や引張の応力が支配的に結晶を回転させたことがわかった.本研究は,公益財団法人天田財団の平成26年度一般研究開発助成(AF-2014026)を受けて行われた.FE-SEM-EBSD装置による結晶方位観察は,大学院生の鈴木葵さんの助力により行われた.ここに深く感謝の意を表する.1)Yuko MATAYOSHI・Takashi SAKAI・Ying-jun JIN・Jun-ichi KOYAMA:International Journal of Chemical, Nuclear, Metallurgical and Materials Engineering, 8-12(2014), 1278.2) 酒井孝・平尾哲郎・小俣均・小山純一:JCOSSAR2011, A-7(2011), 554.3) 酒井孝・則近孝彰,・森本秀夫:JCOSSAR2011, A-7(2011),5424) 酒井孝・平尾哲郎・小俣均・小山純一:塑性と加工, 54-625(2013), 158.- 34 -
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