FORM TECH REVIEW_vol30
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図1曲げ部の測定点と画像結合のイメージ図2小傾角粒界と大傾角粒界の面積分率■■■マップによる評価■・■巻末の表3に,曲げ角度ごとのKAM(Kernel Average Misorientation)マップを示す.KAMマップは隣接測定点から微視的方位変化や局所方位差を表しており,KAM値の大小は(特にGN(GeometricallyNecessary Dislocations))転位の堆積と比例する.図ではKAMの最大値を5°としている.納入材の180°の状態でも板厚方向全体でうっすらと青色で色付けされていることから,ある一定のKAM値を有していることがわかる.このことは図3に示した180°のKAM値分布からも明らかで,0.5°までのKAM値におよそ0.7の面積分率が分布している.この上で曲げ変形が加わると,140°より鋭角の90°の間で特に圧縮側と引張側にKAM値の高い領域が現れる.そしてその幅は曲げ角度に応じて90°に近づくほど広くなった.■■■■マップによる評価■・■巻末の表4に,曲げ角度ごとのGROD(Grain Reference Orientation Deviation)マップを示した.GRODは1つの結晶粒内での方位差を表しており,今回は最大値を30°に設定した.このGRODは結晶ごとの残留ひずみも表している.の境界は,上述した小傾角粒界と大傾角粒界の割合が逆転した境界と一致する.この傾向はさらに曲げ角度が鋭角になるほど顕著で,特に110°,100°,90°では粒内方位差が大きい赤色の付いた結晶粒が増えた.結晶回転しているわけではないことがわかる.すなわち,ある特定方位が優先的に回転するよりも,ここでは曲げにおける圧縮や引張の応力が支配的に結晶を回転させた.■■■マップによる評価■・■巻末の表5に,曲げ角度ごとのODF(Orientation Distribution Function)マップ(φ2=45°断面)を示した.ODFはオイラー空間内に結晶方位分布を示したものであり,φ2=0°,45°(特に今回のbcc金属では45°)断面を観察することで,特定の集合組織を表すことができる.今回の集合組織に関連したODFマップの見方チャートも合わせて示した.ーンの良し悪しにより結晶ひずみに対応した情報を表示できる.図中の黄色の実線は隣接方位差2°≦θ<15°の小傾角粒界,黒色の実線は隣接方位差θ≧15°の大傾角粒界をそれぞれ表している.小傾角粒界の導入は,画像中央の中立軸部から距離が離れた圧縮側および引張側それぞれの表層部で顕著となった.一般に小傾角粒界は再結晶過程の回復が起こる際に導入されることが知られているが,ここでの小傾角粒界の増加は曲げひずみの増加によって導入されたものである.小傾角粒界と大傾角粒界を定量的に図示した図2より,曲げ角度の増加とともに,小傾角粒界が増加して大傾角粒界が減少していることが分かる.この両者の割合が逆転するのは,曲げ角度130°と140°の間となった.■■■マップによる評価■・ 巻末の表2に,曲げ角度ごとのIPF(Inverse Pole Figure)マップを示す.これらは試料座標系をND方向に設定し,結晶面がどの方向に配向しているかを表したものである.曲げ角度の増加すなわち曲げ応力の負荷にともなって,もともと等軸状の結晶粒が圧縮側では縦方向に伸長,引張側では横方向に伸長する一般的な傾向が見られた.しかしここから得られる結晶方位の情報に関しては,主だった変化は見られなかった.130°よりも鋭角に曲げた場合に,圧縮側表層部および引張側表層部に粒内方位差が大きい結晶粒が散見される.こ100°圧縮側の四角破線部を,図4としてIPFとGRODの同一箇所を比較して表示した.図では①〜⑧まで番号を付けた結晶粒が特に方位差が大きい.IPFからわかるこれらの結晶方位はランダムであり,ある特定方位が優先してSPCCなどのbcc金属は,圧延などの加工により{001}<110>〜{111}<110>(すなわちRD//<110>の繊維状組織:ODFマップの見方チャートの緑色破線)のα-fiberや,{111}<110>〜{111}<112>(すなわちND//(111)の繊維状組織:ODFマップの見方チャートの青色破線)のγ-fiberに- 33 -

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