FORM TECH REVIEW_vol30
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キーワード:集合組織,結晶方位,SEM-EBSD観察,曲げ,OIM解析 1.研究の目的と背景 ■曲げ加工の高精度化に関してベンディングマシンや金(2)中間仕上げ研磨:3μmのメタダイ(ダイヤモンド)(3)最終仕上げ研磨1:1μmのアルミナ(酸化アルミニ(4)最終仕上げ研磨2:0.03μmのコロイダルシリカ(窒化ケイ素)を用いて回転数120rpm,荷重3lb,1.8ks ■SEM観察とEBSD測定では,試料座標系をND(Normal Direction)方向に設定し,およそ250μm×90μmの範囲を0.2μm間隔で走査した.これを板厚方向に5枚繋げて,1つのEBSD画像が板厚t=1.2mmをカバーするようにした.すなわち結晶方位について調べた巻末の表1〜表4の全てのマップにおいて,1枚の画像の上から下まででちょうど板厚t=1.2mmに対応している.この観察イメージを図1に示した.集合組織の面積率は,隣接する結晶粒の方位差15°未満を同一方位成分として解析した.このようにして作成したEBSD画像に対して㈱TSLソリユーシヨンズ社製のOIM ver. 7.0を用いて,種々の結晶方位解析を行った. ■結晶方位に関する解析は,IQ(Image Quality)マップ,IPF(Inverse Pole Figure)マップ,KAM(Kernel Average Misorientation)マップ,GROD(Grain Reference Orientation Deviation)マップ,ODF(Orientation Distribution Function)マップ,などについて多角的かつ定量的に行った. 3.解析結果および考察 ■■・■■■■による評価■■巻末の表1に,曲げ角度ごとのIQ(Image Quality)マップと小傾角粒界および大傾角粒界を示した.IQではパタ型の改良に関する研究は多いが,被加工材である金属材料の結晶方位特性を考慮した曲げ加工の高精度化に関するものは少ない.また金属材料の曲げシミュレーションに関する研究も多いが,結晶方位特性は考慮されていない.このような背景のもと,著者らはこれまでにいくつかの金属材料に対して,曲げ変形における結晶方位の変化について定量的に求めてきた1)〜4).■■一般的な曲げの被加工材は多結晶金属であり,これは製造工程において塑性加工と熱処理を組み合わせて製造されるので,最終的に特定方位に優先配向した集合組織を形成するものがほとんどである.この集合組織は金属の塑性異方性を決定するので,塑性加工や機械的性質と密接な関係がある.すなわち,金属の曲げ変形において集合組織の分布と状態を理解することは,非常に重要である.■■本研究では,曲げの被加工材として最も一般的であるSPCC材多結晶材に対して,板厚方向に関して曲げ角度の変化に対応した集合組織の測定と結晶方位解析を行った.これより,曲げ変形にともなう集合組織の形成と回転のメカニズムを明らかにした.ここで得られた知見は,高精度曲げ加工を実現するためのメカニズム解明の一助となるだけでなく,曲げシミュレーションにおいて個々の要素に結晶方位を代入するための基礎データとしても役立つ. 2.供試材および実験方法■■供試材には板厚t=1.2mmの一般圧延鋼板のSPCC材を使用した.定尺から100mm×50mmにシャーリングで切り出し,曲げ試験用の試料を準備した. ■曲げ試験は50kNロードセルの万能試験機に,㈱アマダ社製のパンチ先端半径R=0.65mm,パンチ先端角度88°のパンチ,V幅8mm,ダイ角度88°のダイ,ダイ固定レールを取付けて,内角が90°になるまで曲げ速度1.0mm/minで10°ごとに実施した.すなわち,180°,170°,160°,150°,140°,130°,120°,110°,100°,90°の計10種類の曲げ角度の試料を準備した.曲げ線がRD(Rolling Direction)方向に対して垂直となるように曲げを行った.曲げ角度は曲げ後に角度測定器を用いて測定した.この曲げ試料の中央成蹊大学■理工学部■システムデザイン学科■(平成26年度一般研究開発助成AF-2014026) 教授■酒井■孝■*成蹊大学 理工学部 システムデザイン学科 教授キーワード:集合組織,結晶方位,SEM-EBSD観察,曲げ,OIM解析 部から,10mm×10mmの曲げ部をシャーリングで切り出し集合組織観察した. ■集合組織観察は日本電子㈱製の電界放出型走査型電子顕微鏡(FE-SEM,JSM-7001F)を用いて,EBSD法により局所的な結晶方位測定を行った.観察準備として,1.0インチサイズの導電性樹脂に埋め込んだ試料を以下のノウハウの手順に従って精密研磨を行った.研磨機はBuehler社製のEcoMet 3000を用いた. (1)面出し研磨:#200, #400, #600, #1000, #2000, #3000の耐水研磨紙を用いて回転数120rpm,荷重4lb,120s を用いて回転数120rpm,荷重4lb,240s ウム)を用いて回転数120rpm,荷重3lb,60s - 32 -T. SakaiSPCC材の曲げ変形に対する集合組織のSEM-EBSDその場観察SPCC材の曲げ変形に対する集合組織のSEM-EBSDその場観察 酒井 孝*Review

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