1.研究の目的と背景*広島県立総合技術研究所 東部工業技術センター 担当部長化化合合物物層層M. Sakamuraキーワード:摩擦アンカー接合,異材接合,亜鉛めっき鋼(■■鋼),アルミニウム合金近年,地球温暖化防止策として,輸送機器産業では燃費向上を目的とした車体の軽量化が推進されている.その一つとして,アルミニウム合金と鋼のハイブリッド構造が推奨されており,これに伴い,アルミニウム合金と鋼の異種金属接合が必要となっている.現在,この異種金属接合に対してセルフピアシングリベットや摩擦攪拌接合などの様々な接合技術が検討され,実用化されている1-5).また,現在,輸送機器に利用されている鉄鋼材料の多くは,防食のために亜鉛めっきが施されているものが数多く見受けられる.したがって,接合対象としてアルミニウム合金と亜鉛めっき鋼の組合せを視野に入れる必要がある.一方,筆者らは,アルミニウム合金と鋼の重ね点接合を行う手法として摩擦アンカー接合を考案し6),これまで,A5052とSPCCの2枚重ね継手,A5052/SPCC/SPCCの3枚重ね継手の機械的性質について報告を行ってきた7,8).摩擦アンカー接合は,一般的な摩擦攪拌点接合と同様に,重ねて配置された2枚以上の供試体に,接合ツールを回転させながら押し当てる接合手法である.本手法では先端が球面の接合ツール(図4参照)を用い,この接合ツールを回転させながら下板の鋼側まで押し込む.そして,下板の鋼からなる突起部を上板のアルミニウム合金中に形成し,その突起部のアンカー効果により接合する.本手法で得られた接合材は,特に,十字引張強度が高いことを特徴としている.しかし,本手法をA5052と溶融亜鉛めっき鋼(GI鋼)の重ね継手に適用すると,A5052中に鋼突起を形成することができず,そのために得られた継手の接合強度が低位となることが分かった9).また,本手法をA5052と合金化溶融亜鉛めっき鋼(GA鋼)の重ね継手に適用すると,以下の現象が発生し十分な継手強度が得られないことが判明した10).①A5052/SPCCの場合(図1)に比し鋼突起は高さが低くなり,ひだ形状を呈する.②鋼突起の周辺に多量の化合物層が存在する(図2).これらの原因は,GAめっき膜とアルミニウムの直接接触であると考えている.そこで本研究では,この対策として,表面に陽極酸化被膜を有するアルミニウムとGA鋼に摩擦広島県立総合技術研究所東部工業技術センター(平成 ■年度一般研究開発助成■■■ ■■■■ ■)担当部長坂村勝図1A5052/SPCC接合材の断面マクロ及び光学顕微鏡■■写真(押込量1.5mm)図2A5052/GA接合材の断面SEM写真(押込量1.5 mm)アンカー接合を適用し,上記①,②の現象を抑制することを試みた.ところで,アルミニウム合金を対象とする摩擦攪拌接合では工具鋼ツールで十分な耐久性が確保できていた.しかし,最近では,本接合法を鋼等の高融点材料へ適用する研究が活発に行われている.その際に問題になるのが接合ツールの耐久性であり,Ir合金,Co合金等の合金系接合ツール11-13)や,厚膜コーティングを施した超硬合金等の報告14)がなされている.しかし,いずれの材料もコスト面に問題があり,自動車等の大量生産に適用するのは困難な状況にある.これに対して,筆者らはツール形状に着目し,安価な窒化珪素球面を先端に有する接合ツールを提案し,これまで,東芝マテリアル㈱と共同で研究開発を行っている.窒化珪素は超硬合金やCo合金等と異なり,地球上に大量に存在する“窒素”と“珪素”から構成され,量産を行えば行うほど製造コストを低減できるという特徴を有している.したがって,今後,接合ツール用窒化珪素の更なる耐久性向上が達成できれば,1円/打点以下の低コストでの接合が可能であると推定している.(なお,川崎重工業㈱も鋼の摩擦攪拌点接合の当面のコスト目標を1円/打点以下としている15).)これらの背景より,本研キーワード:摩擦アンカー接合,異材接合,亜鉛めっき鋼(GA鋼),アルミニウム合金500 μm100μm(a)A5052SPCC(a1)A5052GA1 mm(a1)- 27 -メタルフローを利用した新たな異材接合技術の開発メタルフローを利用した新たな異材接合技術の開発坂村 勝*Report
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