FORM TECH REVIEW_vol30
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2.通電加熱ホットスタンピングにおける加熱直後のブランキング ■3.リン酸を用いた超音波洗浄による酸化スケールの除去■■■■■小型部品では高温炉から取り出すと急激に冷却されて熱間加工ではなくなるため,比較的大型である自動車ボディの骨格部材に適用が限定されている.本研究では,次世代スマートホットスタンピングを開発するための基盤技術を研究し,これらの問題点の解決を図った.鋼板に大電流を通電すると急速に加熱できるため,ホットスタンピングへの適用が検討されている.通電加熱ホットスタンピングは,大型加熱炉が必要なくなって電源だけになり,装置がコンパクト化される.通電加熱ホットスタンピングは一部メーカーで既に実生産に用いられており,設置面積および設備費が加熱炉の1/10になるという報告がある3).日本における生産では,現状の大型ホットスタンピングを導入するのが困難になってきている.通電加熱ホットトリミングは鋼板に直接加熱するためエネルギーコストも高く,通電とダイクエンチングは両方とも数秒程度であるため,それらを同時に行うと生産時間が半分になる.通電加熱では,図2(a)に示すように鋼板の両端を電極と接触させて通電するため,矩形鋼板しか均一に加熱できない問題があり,矩形に近い製品形状でないと材料歩留まりが低下する.また,電極と接触している付近は温度が上昇しないため,非加熱部によって成形性が低下する場合もある.そこで,図2(b) に示すように通電加熱直後にブランキングを行った.図2通電加熱ホットスタンピングにおける加熱直後のブランキング通電加熱直後ブランキングにおけるスクラップ,ブランク,成形品を図3に示す.成形品は割れを生じることなく成形されている.通電加熱は短時間であり,表面の酸化スケールは比較的少ない.図3通電加熱直後ブランキングにおけるスクラップ,ブランク,成形品通電加熱直後ブランキングにおける成形品フランジ部の肉厚減少率を図4に示す.ブランキングなしでは板厚減少は大きいが,ブランキングを行うことによって板厚減少は小さくなっており成形性が向上している.図4通電加熱直後ブランキングにおける成形品フランジ部の肉厚減少率アルミニウムめっき処理鋼板はホットスタンピングで最も多く使われており,酸化スケールが発生しないが,高価である.金属間化合物を表面に生成して酸化を防止しているが,5分程度の加熱時間が必要となり,これが加熱炉が大きくなる原因である.通電加熱は急速加熱であり,アルミニウムめっき処理鋼板を使用することができなく,非めっき処理鋼板が使われている.非めっき処理鋼板はアルミニウムめっき処理鋼板と比べて低価格である.非めっき処理鋼板の酸化スケールを除去するために,ショットブラスト処理が一般的に使われているが,通電加熱は急速加熱であるため,生成される酸化皮膜は薄く,薄い酸化膜の除去としてリン酸を用いた超音波洗浄を開発した.電流銅電極通電加熱成形+ ダイクエンチングレーザ切断矩形材電流銅電極通電加熱ブランキング成形+ ダイクエンチング(a) 通電加熱ホットスタンピング(b) 通電加熱直後ブランキングホットスタンピング成形品- 22 -

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