1.研究の目的と背景*豊橋技術科学大学 名誉教授キーワード:ホットスタンピング,超高強度鋼部材,スマート化自動車の燃費を向上させるため,自動車部材を軽量化することが望まれている.電気自動車の生産が増加するが,電気自動車は重いバッテリーを積載しているためにエンジン自動車よりも重量増になっており,軽量化がいっそう望まれている.一方,自動車の衝突安全性を高めることも必要になってきている.軽量化と衝突安全性の両者を満足するために部材の高強度化が必要になってきている.軽量材料としてはアルミニウム,マグネシウム,炭素繊維強化プラスチックなどがあり,自動車部材に適用されている.しかしながら,価格面および生産量から鉄系材料が有利であり,冷間プレス成形される高張力鋼板の使用が自動車車体材料として増加している.高張力鋼板の強度は著しく向上しており,引張強さが■■■■を超える超高張力鋼板も開発されるようになってきており,強度を比重で除した比強度は軽量材料と同程度になってきている.このため,自動車部材への高張力鋼板の適用が盛んに行われているが,成形荷重は大きく,スプリングバックが大きくなって形状凍結性が低く,成形性も低く,金型摩耗が顕著になり焼付きも生じやすい.このため,引張強さが■■ ■■■を超える超高張力鋼板の冷間プレス成形は困難である.超高強度鋼自動車部材の製造方法として,ホットスタンピングが注目されている.ホットスタンピングは,加熱した鋼板をプレス成形し下死点で金型を保持することによって成形品を焼入れし,■■■■■■程度の引張強さを有する超高強度鋼部材を製造する方法である.超高強度鋼部材のホットスタンピング■■では,図■に示すように焼入れ用鋼板を高温炉で加熱して,金型に搬送して成形し,下死点で■■秒程度保持することによって急冷して焼入れする.焼入れでは一般に成形品を水または油の中に入れることによって冷しているが,ホットスタンピングでは加熱していない金型で保持することによって焼入れをしており,ダイクエンチングff■■■■■■■■■■■■■■と呼ばれている.ブランクを高温炉で■■■℃程度に加熱してオーステナイトに変態させ,ダイクエンチングで急冷して硬いマルテンサイトに変態させて成形品の引張強さを■■■■■■程度にしている.マルテンサイト変態を生じさせるためには,オーステナイト変態するまで加熱すること,またその(平成 ■年度重点研究開発助成■■■ ■■■■■■)豊橋技術科学大学名誉教授森謙一郎後冷却速度を■■℃■■以上にすることが必要である.ホットスタンピングでは素板の強度は高くないが,ダイクエンチングによって成形品を高強度化している.また,下死点保持を行っているため,成形品のスプリングはほとんどなく,形状凍結性が高い.さらに,海外において鋼板の入手が比較的容易であり,海外生産に適した加工法である.図■超高強度鋼部材のホットスタンピングにおける加工工程焼入れされた成形品は非常に高強度であるため,冷間せん断加工によって穴あけ,トリミングを行うと,金型の摩耗が大きくなり,切り口面の遅れ破壊も問題になる.このため,一般にはレーザー切断によって穴あけ,トリミングが行われている.ホットスタンピングは■■■■■■級超高強度鋼自動車部材を成形できる加工として世界的に生産が拡大しているが,現状のホットスタンピングは次のような問題点を有している.■■■成形を連続的に行うためには加熱したプランクを連続的に供給する必要があり, ■■■■■の高温炉が非常に大きくなり,設備が大型化して高価である. ■ダイクエンチングのために■■秒程度の下死点保持が必要になり,■分間に あるいは■ショット程度であり,生産性が低い.■■トリミング,穴あけをレーザー切断によって行っているため,設備が高価で生産性も低い.■■■ほとんどの鋼板は ■■■■であり,強度が■■■■■■に限定されており,さらに酸化防止のためのアルミニウまたは亜鉛めっき処理鋼板はコスト高になるキーワード:ホットスタンピング,超高強度鋼部材,スマート化- 21 -K. Mori超高強度鋼部材の次世代スマートホットスタンピングの開発超高強度鋼部材の次世代スマートホットスタンピングの開発森 謙一郎*Report
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