FORM TECH REVIEW_vol30
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点■点■点■点■図15切削鍛造による温度上昇図16はパンチ刃先付近の圧力分布である.切れ刃のごく狭い領域においてはかなり高い値となっており,工具材図16パンチ刃先の接触圧力図15は切削鍛造による被加工材と工具の温度上昇のFEMシミュレーション結果である.FEMシミュレーションの条件は前章の実験条件に合わせた.工具と被加工材間の熱伝達係数を40 kW/(m2K)とし,実験室の環境温度を20℃とした.パンチ速度が10mm/sの場合,パンチ刃先の温度は70 ℃程度であるが,パンチ速度が100 mm/sと大きくなると,パンチ刃先の温度は170 ℃に上昇する.しかし,切削加工の刃先のような高温にならず,温度上昇に起5.切削鍛造のトライボ条件6.切削鍛造法の活用事例図■■は,鍛造品の表面性状を示す.図■■のA,B,C,Dは,図■■に示す位置に対応している.ウェブの上面は溝状の構造であり,ウェブの下面は鏡面で,切削加工の切りくず表面と似ている.内壁面Dはパンチで強く平滑化されているが,焼付きは生じていない.図■■切削鍛造品の表面状態(t0/tc0= 0.55)7)切削鍛造において,被加工材の動きと変形量は切削加工と類似である.しかし,プレスによる切削鍛造の加工速度はせいぜい10~100 mm/s程度で,切削加工と大きく異なる8).因する潤滑・冷却・工具摩耗などの諸課題に関しては,切削鍛造は切削加工よりも対処しやすいと考えられる.(a) 被加工材の温度分布料の耐圧強度と耐摩耗性に注意を要する.また,図14(d)の鍛造品表面にパンチによる掘り起し傷が見られ,量産におけるパンチの耐焼付き性能が問題となる可能性が高く,被加工材の材質に合うパンチ表面コーティングを選択することが重要である.上述したように,絞り-しごきカップの底面は切削鍛造によって自由に移動することができる.被加工材の一部を自由に移動させることができる切削鍛造法の特長を利用することによって,複雑形状の部品を簡易な工程で成形可能となる.図■■のトリプルカップは大豊精機㈱の開発事例である.切削鍛造法を用いて,カップの片側に中空軸をもつプリフォームから中空軸を移動させて,カップ両側に軸をもつ形状を成形している.このように,切削鍛造法を塑性加工技術体系の中に組み込むことにより,塑性加工技術の競争力が大幅に向上する.しかし,切削鍛造法は提案されて間もない新技術であり,未解明な点が多い.力学的には切削加工との類似点が多いが,トライボロジー的にはかなり異なる.今後,材料学,加工学,トライボロジーなど多くの側面からの比較研究が進展されることを期待したい.(b) パンチの温度分布- 19 -軸方向半径方向半径方向軸方向■■■■■■

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