FORM TECH REVIEW_vol30
102/116

■■・■■摩擦摩耗試験結果■)022(○○)002(○○)111(○○)044(◆◆)004(◆◆)113(◆◆).ua(ytisnen.tI tf mm0mm1nuomamm2mm3○SUS316L◆FeAl2O4 sucoeD604040602θCu Kα [deg]80802020Ni plating305070表4■試験片表面のEDX分析結果(%)■ ■■・ ■■線回折法による改質層構成物の同定■■前述の試験片で形成した拡散領域での各元素の結合状態を調べるため,XRDによる構造解析を行った.得られた回折ピークを図7に示す.同図中の○で示したピークはSUS316L由来のピークである.記号のあとの括弧内の数値は,それぞれの回折ピークと対応する結晶方位である.同図では○で示したSUS316L由来のピーク以外に◆で示した複数のピークが存在することがわかる.このピークは,レーザ照射により生成された物質の回折ピークであると考えられる.データベースによると,これらの回折ピークはスピネル構造を有するFeとAlの酸化物であるFeAl2O4の持つ回折ピークであることがわかった.FeとAlのスピネル型酸化物は,高硬度かつ耐食性に優れることが知られており11)~13),本手法により形成された拡散層も同等の機能を有すると推察され,耐摩耗性の向上が期待できる. ■■■・■■デフォーカス量が改質層形成に及ぼす影響■■つぎに,レーザエネルギ密度が変化した際の影響を明らかにするため,0~3 mmまでデフォーカス量を変化させてレーザ照射を行った試験片の断面をSEMにより観察・分析した.その結果を図8に示す.同図より,デフォーカスを0 mmとした場合では,基材表面が大きく加工され,大きな凹凸が形成されていることがわかる.また,EDX分析結果からAl成分は基材表面に存在するものの,明確な改質層が形成されていないことがわかる.一方,デフォーカスを1 mmとした試験片では,デフォーカスを0 mmとした際よりも基材表面が加工されておらず,Al成分が基材表面に局在しており,明確な改質層が均質形成されていることがわかる.これは,焦点をずらすことで,エネルギAl - 33 Un-treatment area Treated area ■O 1 47 Fe 68 14 Cr 16 4 Ni 15 2 - 100 -密度が低下し基材の溶融を抑制しつつ,均一な加熱が行われたことを示している.また,デフォーカス量を2 mmとした場合では,デフォーカスが1 mmの時よりも薄い改質層が形成されていることがわかる.これはエネルギ密度の低下に伴い,基材への入熱量も低下したためであると考えられる.このことは,デフォーカス量の調整により,改質層の厚さを制御することができることを示している.また,デフォーカス量を3 mmとした場合では,Al成分はほとんど検出されず,改質層が形成されていないことがわかる.このことにより,改質層が形成されるデフォーカス量の閾値は2から3 mmの間に存在することがわかった. 図7■レーザ照射を施した試験片のX線回折パターン 図8■試験片断面のSEM観察およびEDX map分析結果 溶液濃度10 mass%,レーザ出力9W,走査速度50 mm/minの条件でデフォーカス量を0,1,2 mmとしてレーザ照射を施した試験片に対し,摩擦摩耗試験を実施した.摩擦摩耗試験中の摩擦係数の推移を図9に示す.なお,同図には,比較のため,レーザ照射処理を施していない試験片の摩擦摩耗試験結果も示した.図9より,デフォーカス量を1および2 mmとしてレーザ照射を施した試験片の摩擦係数は小さく,デフォーカス量0 mm及び,未処理材の摩擦係数ResinTreatment layerSpecimenSEM imageAl element30 μm15 μm15 μm15 μmFe element3.結果および考察 ■■・■■レーザ照射による改質層形成 ■溶液濃度10 mass%,レーザ出力9W,走査速度50 mm/minデフォーカス量1 mmの条件でレーザ照射実験を行った.レーザ照射面に対し,EDXによる成分分析を行った結果を表4に示す.同表では,Al,O,Fe,Cr,Niの各元素を足し合わせた値を100%とし,それぞれの元素の存在割合を濃度換算している.表5より,未照射領域と比較して,レーザ照射領域では,Al成分,O成分の割合が増加し,SUS316L材を構成するFe,Cr,Ni成分が減少していることがわかる.基材に最も多く含まれるFe成分と比較して,溶液由来のAlおよびO成分の割合が多くなっていることから,基材表面において反応が生じ,組成が大きく変化したことが分かる.

元のページ  ../index.html#102

このブックを見る