FORM TECH REVIEWvol29
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■ 図11■(a)レーザーパルスを1秒間照射したスポットの3次元形状。(b)手動ステージで掃引した加工跡の3次元形状。 1) Yutaka Nomura and Takao Fuji, “Efficient chirped-pulse amplification based on thulium-doped ZBLAN fibers,” Appl. Phys Express 10, 012703 (2017). 2) Yutaka Nomura and Takao Fuji, “Generation of watt-class, sub-50 fs pulses through nonlinear spectral broadening within a thulium-doped fiber amplifier,” Opt. Express 25, 13691 (2017). - 71 -3.まとめ 謝■辞■参考文献 これらの加工跡をさらに詳細に3次元測定したところ、表面にデブリのような構造が残っていることがわかった。このデブリを除去した後の表面の形状を3次元測定した結果を図に示す。赤い領域は盛り上がっている領域であり、青い領域は窪んでいる領域である。このことから、1点に集光した際は数マイクロメートル程度のくぼみができているものの、くぼみの脇に盛り上がりが生じていることがわかる。また、レーザー光を掃引した場合は、基本的にレーザーが当たった領域の近傍が盛り上がっており、その中央部がわずかに窪んでいることがわかる。いずれの場合も盛り上がりが生じているが、パラメーターを調整することでこれらの形状が変わってくると考えられる。 以上のように、2光子吸収を利用してシリコンウェハーの表面に加工を施すことに成功した。将来的には、パラメーターを調整することでより効率よく品質の高い加工を目指すほか、この波長域の高い透過性を活かしてシリコンの内部や背面への加工の可能性も探求したい。 ツリウム添加ZBLANファイバーを用いて、波長2 μm帯における超短パルスレーザー増幅器を開発した。 通常のチャープ・パルス増幅システムを開発することにより、平均出力3.9 W、パルス幅150フェムト秒のパルス列を繰り返し周波数67.5 MHzで得ることができた。さらに、この出力を石英ファイバー増幅器と比較した結果、ZBLANを用いれば数ワット程度の出力であれば非常に効率よく増幅できることが分かった。また、あえてチャープ・パルス増幅をやめ、増幅ファイバー内の非線形効果を利用することで、増幅後においてもスペクトル幅を非常に広くすることができ、時間幅48フェムト秒という非常に短いパルスを平均出力2.5 Wで得ることができた。さらに、パルスの繰り返し周波数を減らすことで、パルスエネルギーが数十倍高いパルス列を平均出力2 Wで発生させることもできている。 この光源を利用して、アクリル板やシリコン板をサンプルとした加工を試み、それぞれサンプル表面に変質が生じているのを確認できた。これらのパラメーターを調整していくことで、加工の品質を上げていくことが可能となると考えられる。この新たな波長域の光源は、これらの加工例にとどまらず、これまでと異なる様々な特殊加工の実現につながると期待される。 本研究は、公益財団法人天田財団の一般研究開発助成のご支援を受けて行われました。また、ファイバーラボ株式会社の三村榮紀氏、小川和彦氏には、フッ化物ファイバーのご提供および有益なご助言をいただきました。ここに謝意を表します。

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