FORM TECH REVIEWvol29
71/114

図9■アクリル板に平均出力500 mWで1秒間照射した際の加工跡の(a)写真、および(b)3次元解析結果(各軸の単位はmm)。 図10■(a)レーザーパルスを1秒間(左)および10秒間(右)照射した際に生じたスポット。(b)手動ステージにて掃引した加工跡。 - 70 -そこで、一段目の増幅器の出力パルス列を、ポッケルスセルと呼ばれる電気光学素子に通すことで、繰り返し周波数を67 MHzから1 MHzまで低減させた。この際、パルスの数が減った分、平均出力も下がっている。このパルス列に対し、2.3節の増幅器と同様の増幅器をもう一段用意することで、再度平均出力を2 W程度まで増幅した。これにより、平均出力はほとんど変わらないものの、パルスエネルギーは2 μJ程度と、増幅前の数十倍に増強することが出来た。この際のパルス幅は約200 fsで増幅前の約4倍になっているが、これを考慮しても集光時のピーク強度は10倍以上になっており、より効果的に非線形効果を利用することが可能となる。  ■■■シリコン板への照射テスト■シリコンは波長2 μmの光を透過するため、この波長の光を普通に照射しても加工することは容易ではない。しかし、超短パルス光を集光することで高強度の光を集中させれば、2光子吸収などの非線形相互作用が生じて加工することが可能となる。2光子吸収を起こすには非常に高い強度の光が必要となるため、この現象は集光点近傍のごく限られた領域のみによって引き起こされる。すなわち、加工領域を限定することができる。また、材質表面のみならず、内部や裏面に加工することも可能となると期待される。 そこで、シリコンウェハーをサンプルとして、高パルスエネルギーのパルス光を集光することで加工を試みた。図に、同じスポットに1秒および10秒間照射した結果及び、手動のマイクロメーターステージによってスキャンしながら加工した結果を示す。なお、レーザー光はBrewster角に入射させた。すなわち、いずれの画像においても紙面の斜め上方向から入射している。1点への集光では、幅10 μm、高さ40 μm程度の大きさのスポットができていることがわかる。高さ方向に長いのは、斜めに光を入射したためと考えられる。10秒間集光した場合は、ややスポットが汚くなっているものの、横方向のサイズに大きな違いは生じていない。また、横方向にスキャンした結果、幅40 μmの直線状にシリコンを加工することができた。この波長域の光はシリコンに対して非常に透過率の高い光であるため、これらの変質は2光子吸収をきっかけとして起きたと考えられる。今回はBrewster角に入射するという実験条件の都合上、幅の広い直線になったが、垂直に近い角度で入射すれば、より幅の細い構造も加工できると期待される。

元のページ  ../index.html#71

このブックを見る