■ 図10■種々の条件で積層造形された試験片の 図10(a),(b)に基準造形物Aを示す.平均粒径25 µmの粉末が4~8個程度合体して100~200 µmの粒径のクラスタになっていることが分かる. 図6にエネルギー密度と充填率との関係を示す.エネルギー密度の増加に伴い充填率は増加している.最も高い充填率は造形物Jの75.6 %であり,逆に最も低いのは造形物Gの48.9 %である.造形物Aのエネルギー密度を基準とすると,それより大きなエネルギー密度H, I, Jの場合は,エネルギー密度と充填率の関係は線形である.また,造形物Aより低いエネルギー密度の領域では,同一のエネルギー密度であっても,積層厚さが充填率に与える影響が最も強く,次いで走査速度,走査ピッチの順である. 図7に等価ヤング率と圧縮試験荷重の関係を示す.圧縮荷重の増加に伴い,等価ヤング率が上昇している.これは図8に最大ひずみと圧縮荷重の関係を示す.圧縮荷重10 kNの時の最大ひずみは造形物Gが最も大きく0.63であり,造形物Iが最も小さく0.11である.造形物Aよりもエネルギー密度が小さい造形物の最大ひずみは大きく図9に,充填率と10kN負荷時の等価ヤング率の関係を示す.充填率と等価ヤング率の関係はやや複雑であるこ図10に,造形物の上面と垂直断面のSEM画像を示す. エネルギー密度(4つのパラメータ)ごとに焼結状態と内部構造に違いが見られたので,パラメータごとに考察する. ると思われる.なお,この図でH-, H+の標記は,Hのエネルギー密度を若干増減させたものである.I-についても同様である. 造形物内の空隙がつぶれクラスタ同士が接触を開始することが原因と考えられる.造形物Iに10kNを加えたときに,最大101GPaの等価ヤング率が得られた.造形物I,Jは圧縮試験初期から等価ヤング率が大きく上昇している.エネルギー密度25.9~77.7 J/mm3の造形物の多くは圧縮荷重7kN以降に等価ヤング率が増加し,約50 GPaに達している.これに対して,中間のエネルギー密度102~196 J/mm3の造形物H-, H, H+は,圧縮荷重7 kN以降も等価ヤング率の増加は見られず,約18 GPaにとどまっている. エネルギー密度が高い造形物でも,圧縮荷重を加える前の等価ヤング率は10GPaを下回る低い値を示した.この理由の一つには,造形したままの試験片を使っているので,圧縮試験のジグと接触する造形物の表面粗さが影響を及ぼしていることが考えられる.造形物表面の上下面を機械加工して平面出しを行ってから圧縮試験を行えば,低圧縮荷重域でエネルギー密度が高い造形物のヤング率が高く出る可能性はある. なり,それ以外のものは比較的最大ひずみが小さくなる傾向にある. とが分かる.しかし,両者には比例関係が存在し,エネルギー密度64~72 J/mm3のときに,等価ヤング率が予想に反して大きくならないと見ることもできる. ■■上面組織と断面組織のSEM観察像 - 91 -
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