■摩擦攪拌接合材では,金属間化合物層はサブμmもしくはそれ以下であり,FeとAlがほぼ直接接触している状態である.そのため,接合材表面から界面に沿ってAlが腐食されていき,ほぼ直線的に接合強度が低下するといえる.一方,レーザ接合材の場合,数μm程度の金属間化合物層がFeとAlの間に存在しており,これがある程度腐食を妨げる効果を付与していると考えられる.電界腐食では,一平28年塑加春講論,(2016),337. 謝■辞■参考文献 般にプール状のピットがまず形成され,このピット内でClイオン濃度が高まり,腐食が促進されると考えられている.今回の試験片では,レーザ照射痕が当初からプールの役割を果たすため,金属間化合物層を挟んだアルミニウム側で同程度の大きさまで初期的に急激な腐食が生じたものと考えられる.しかしながら,金属間化合物層は腐食されないため,表面上をアルミニウム側に腐食が進行するモードに移ることによって,一度強度低下が抑えられる結果となったと考えられる.一方,腐食はアルミニウム側のプールで表面方向とともに次第に板厚方向にも進行し,三角形状の腐食プールとなっていく.さらに板厚方向に腐食が進行することで,強度低下が進み,最終的に分離したものと考えられる.今後,レーザ照射痕を小さくすることで,初期的な腐食を抑制できれば,図15に見られた強度低下は生じず,摩擦攪拌接合材に対する耐腐食性に関する優位性が示せるかもしれない. 5.おわりに ■本研究では,鋼/アルミニウムの突合せレーザ接合材に関して,テーラードブランク成形利用のための現状におけ1) M.J. Rathod・M. Kutsuna,:Welding Research, 83 (2004), 16s. 2) T. Tanaka・T. Morishige・T. Hirata:Scripta Materialia, 61 (2009), 756. 3) 森田辰郎・坂本光・馬渕信太・飯塚 高志:材料, 58 (2009), 317. 4) Y. Abe・T. Kato・K. Mori:Journal of Materials Processing Technology, 177 (2006), 417. 5) K. Nishimoto・H. Fujii・S. Katayama:Science and Technology of Welding and Joining, 11 (2006), 224. 6) G. Sepold・M. Kreimeyer:Proceedings of SPIE, 4831 (2003), 526. 7) 飯塚高志・瓜田二朗・高倉章雄:第56回塑加連講論,(2005),543. 8) T. Iizuka・S. Kajikawa・N. Hatanaka・N. Takakura:Steel Research International Special Ed. (ICTP 2011), (2011), 651. 9) T. Iizuka・R. Itani:Key Engineering Materials, 504-506(2012), 405. 10) 飯塚高志・阪本大夢・奥田泰丈・小野裕之・森田辰郎:11) 飯塚高志・奥田泰丈・小野裕之・森田辰郎:第66回12)阪本大夢・飯塚高志:平29年塑加春講論,(2017),133. る主な三つの課題について,それぞれ接合界面の微小構造の観点も含めてこれまでの研究成果を紹介した. 接合強度の向上に関しては,多岐に渡る接合条件について,今後より詳細に検討していく必要がある.成形性の問題に関しては,現状では接合強度の向上によって改善されるところが強いが,組織や特性の大きな違いに起因するテーラードブランクに特徴的な現象について検討する必要がある.電界腐食に関しては,まだ十分な研究が行われていないものの摩擦攪拌接合材のような完全な固相接合材とは異なる現象が見られている.これは異材テーラードブランクの実現に対する電食という大きな壁を超えるヒントを与えるものかも知れない. 本研究の一部は,公益財団法人天田財団からの一般研究助成(■■■ ■■■ ■ )により実施した研究に基づいていることを付記するとともに,同財団に感謝いたします. 塑加連講論,(2015),115. - 85 -
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