は,20サイクルまでおよそ直線的に強度低下が見られ,20サイクル以降は60サイクルまで緩やかな強度低下となり,最終的に70~80サイクルで分離する結果となった.一方,参考で示した固相接合材に関しては,30サイクル程度までは当初の強度を保っているが,その後急激に強度が低下し,40サイクルで分離してしまうという結果であり,試験による強度低下の様子に違いが見られた. ■■■ ■複合サイクル試験片の界面の微細構造■■■■鋼/アルミニウム合金のレーザ接合材の複合サイクル試験に関する報告はほとんどない.そこで,表5に示すようなJASOに定められた複合サイクル試験法に則ってSPCCとA6061-T6の加圧突合せレーザ接合材の複合サイクル試験を実施した.ただし,レーザ入射面を塩水噴霧側に配置している. 4.鋼/アルミニウム突合せレーザ接合材の耐電食性および界面の状態 ■■■■■接合材の複合サイクル試験■■■■サイクルの進行に伴う試験片の外観の様子を図13に示す.図において,右側が鋼側となっている.図を見ると,まず鋼側の腐食が大きく進行しているように見える.これは赤さびで鋼表面が覆われていく様子が目に付くからである.しかしながら,電食では一般にイオン化傾向が高い側で腐食が促進されるので,アルミニウム側の腐食に注目する必要がある.アルミニウム側を見ると,サイクルの進行に伴って表面がうっすらと白くなっている様子が確認でき,最終的に66サイクルで全面が白色に覆われている. 図14には,複合サイクル試験を行った試験片の引張試験後の破断面の様子を示す.まず,0サイクルではアルミニウム側,鋼側ともに金属様の光沢が確認できる.この金属光沢は主に金属間化合物層の存在に起因するものである.21サイクルまでは,およそ前面に金属光沢が見られるが,さらにサイクル数が増加すると,この金属光沢部が上側(レーザ入射側)から徐々に消失していく様子が観察される.最終的に66サイクルでは,全く金属光沢がなくなってしまう. ■引張試験で得られたサイクル数と接合強度の関係を図15に示す.図には参考に摩擦圧接および摩擦攪拌接合を用いて得られた接合材の複合サイクル試験結果を合わせて示している.図から,加圧突合せレーザ接合材に関して ■これまでの研究成果として摩擦攪拌接合材に関する接合界面のFE-SEM観察およびEDS分析結果11),12)から,接合部表面がアルミニウムでおおわれている場合,まず表面腐食とともに表面を覆っているアルミニウムが腐食され,板厚方向に分断される.その後,界面をほぼサイクル数に比例するように腐食が進み,分離に至る傾向が確認されている.そのため,表面のアルミニウム層が分断されるまでは,強度低下が生じずに腐食が遅れるために図15のような結果となったと言える. ■一方,このような固相接合材と全くことなる傾向を示した加圧突合せレーザ接合材について,腐食進行のメカニズムを明らかにするために同様に接合材の接合界面のFE-SEM観察およびEDS分析を行った.結果を図16に示す.図にはサイクルの進行に伴う接合界面近傍のSEM観察像,Al mol濃度およびO mol濃度分布を示している. まず,サイクル数0(複合サイクル試験前)のSEM観察像を見ると,レーザ照射部と考えられる箇所に大きなくぼみが生じていることが確認できる.21サイクルの段階では,接合界面を挟んだアルミニウム側にこのくぼみ深さと同程度のくぼみが腐食によって形成されていることが確認できる.この2つのくぼみの間にはアルミニウム濃度が高い領域があることから,界面自体はあまり腐食されていないことがわかる.33サイクルになるとアルミニウム側の腐食によるくぼみがアルミニウム表面上に広がっている.この状況でも界面自体は残っているように見える.48サイクルでは,界面近傍を残して腐食が板厚方向に大きく進展していく様子が確認できる.最終的に66サイクルで分離しているが,鋼側にアルミニウム濃度が高い領域が存在しており,結局接合界面自体は腐食されずアルミニウムの腐食によって分離が生じたものと考えられる. - 84 -
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