近傍と裏面近傍の様子を示している.Feリッチの金属間化合物層も含めると,両者の化合物層の厚さに大きな違いはないようであるが,Alリッチの金属間化合物層については,レーザ入射面近傍で厚くなっているように見える. 絞り試験では,パンチ肩部破断は生じず,全て接合界面での破断となった.そのため,接合強度が高ければ,より大きな絞り比で容器成形が可能になると考えられる.エリクセン値は,図7(b)の結果から予測できるように,非常に小さいものとなった.引張強さは両素材のおよそ平均の値であり,また全伸びはアルミニウムの半分程度となった.これは,ビード上で破断した点の周りの領域に変形やくびれが集中するためと考えられる. ■また,図10のように接合用素材の相対方向を4種類に変化させて深絞りを行い,耳のでき方を観察した.通常はSPCCでは圧延方向から0°および90°の方向に4つ耳が,アルミニウムでは45°と同等の方向に4つ耳が生じる.結果として,鋼側の界面近傍ではアルミニウム側からの抵抗が低いため,本来耳が生じる場合にも耳は生じなかった.一方,耳が生じる付近が鋼である場合,従来通り耳が生じる.そのため,耳の数が3個~5個に変化するといった面白い結果も得られている. ■■■ ■成形性試験による破断部の微細構造■■■■成形性試験によって破断したエリクセン試験片および引張試験片の破断部の微細構造がどのようになっているかは興味深い.エリクセン試験片は,界面に沿った破断であり,接合強度不足が破断の原因と考えられる.一方,ビードに平行な引張試験では,まずビード部が破断することからビード部の低延性に起因したものと考えられる. ■図11にエリクセン試験で破断した試験片の破断部について,アルミニウム側および鋼側でそれぞれFE-SEM観察およびEDS分析を行った結果を示す.図11(a)に示した,アルミニウム側では,デンドライト状の組織が確認でき,また,EDS分析からもこのデンドライト状の組織はおそらくFeAl3であると推測できる.一方,鋼側ではAl mol濃度が65%以下のFeリッチの薄い金属間化合物層のみが残っている.このことから,破断は図6で見られた薄いFe2Al5層に沿って生じたものと考えられる. ■図12には,引張試験で破断した試験片の破断していない箇所を観察・分析した結果を示す.図ではレーザ入射面 また,レーザ入射面近傍では,亀裂の存在が確認できる.この亀裂に関しては,Fe2Al5層から界面に沿って生じて,それが最終的にFeリッチな金属間化合物層に横断しているように見える.破断形態などを参考にすると,おそらくこの亀裂は引張とともにビード方向に伝播するのではなく,板厚を貫通する方向に進展するものと考えられる. - 83 -
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