FORM TECH REVIEWvol28
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■■■■図8■放出電子のエネルギー分布■■■図7■ピークエネルギーのレーザーフルエンス依存性■イオンの放出過程を次の2つのモデルを適用し比較する。■■•■シース加速■■•■クーロン爆発モデル■■■■シース加速モデル■■シース加速によるイオン放出過程を考えた場合、レーザーを金属表面に照射するとイオンを牽引するような高エネルギーの電子が放出すると考えられる。電子のエネルギースペクトルを図■に示す。低レーザーフルエンス■40mJ/cm2■以下では高エネルギー電子の放出は見られなかった。そのため、シース加速によるイオン放出過程は考えられない。電子エネルギーは■1 eV■以下であり、先に述べた多光子吸収とトンネル効果により電子が放出している議論とも一致する。■■ ■クーロン爆発モデルクーロン爆発によるイオン放出過程を考える。フェムト秒レーザーを金属表面に照射すると、表面プラズマ波が誘起されると仮定する。もし、この波がレーザーパルス時間内に殆ど進行しないほど遅い(群速度が小さい)場合、固体表面に電荷の疎密波が形成され、局所的に帯電した場所がクーロン反発力により爆発を起こし、高エネルギーイオンが放出する。微小固体の■■■次元クーロン爆発モデルにおける放出イオンのエネルギー分布はdN/dE〜E n ■■ ■で表され、球状の微小固体では■n = 1/2、円柱状では■n = 0、平面状では■n =-1/2になる。定性的な議論をするにあたり、レーザー照射固体表面に誘起されるプラズマ波による電荷分布が周期的な円柱状ワイヤーが並んでいる場合を想定し、それぞれの円柱ワイヤーがクーロン爆発することを考える。この場合、イオンの最大エネルギーEmaxは以下のように表される ここで、Z はイオンの平均電荷、e は素電荷、ni はイオン密度、R0 は円柱ワイヤーの半径を示す。ここでR0 を金属表面に形成されるナノ周期構造のピッチに依存している■■■ff■■ と仮定する。一方、イオン密度はレーザー生成表面プラズマ波に比例している:ni F。■■従って、最大イオンエネルギーはレーザーフルエンスに比例することになる。最大イオンエネルギーのレーザーフルエンス依存性を図7の直線に示す。図7より明らかなように、実験結果を定性的に説明することが分かった。つまりこの結果は、ピークエネルギーから見積もった局在化したイオンのサイズとナノ周期構造間隔が定性的に一致していることを示している。■ 4.まとめ ■本研究はアブレーション閾値近傍において放出するイオンの質量スペクトル及びエネルギースペクトルを測定することにより、フェムト秒レーザーのナノアブレーション機構の解明を目指した。中心波長■800nm、パルス幅■130fs■のレーザーを銅表面に照射し、そこから放出するイオンの特性を調べた。入射角度は■70°、レーザーフルエンスは質量スペクトル測定では、10mJ/cm2■から■2J/cm2■まで、エネルギースペクトル測定では、136mJ/cm2■から■14.4J/cm2■まで変化させ測定を行った。本研究で明らかになった点は以下の通りである■■■■。■■•■今日までに報告されている金属のアブレーション閾値よりも1桁低いレーザーフルエンスにおいて、イオンの放出を初めて確認した。■■•■P 偏光においては、レーザーフルエンスが■940mJ/cm2■以下の領域においては1価の銅イオンのみ放出され、それ以上の領域では多価のイオンが放出されることを確認した。■■•■S 偏光においては、レーザーフルエンスが■760mJ/cm2■以下の領域においては1価の銅イオンのみ放出され、それ以上の領域では多価のイオンが放出されることを確認した。■■•■レーザーフルエンスを■20mJ/cm2から2J/cm2まで変化させると、放出イオン量は■桁増加することを確認した。■■•■銅イオンが放出し始める、■いわゆるイオン放出閾値はFth,L = 0.028 J/cm2であった。0.195 J/cm2及び0.470 J/cm2のフルエンスにおいてイオン放出量が急激な増加(約1桁)を- 78 -

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