FORM TECH REVIEWvol28
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削削除除ししなないいででくくだだささいい固体の熱緩和時間(>10-12秒)よりも短いパルス幅のフェムト秒レーザー(<10-13秒)を固体に照射すると、従来の長パルスレーザー(>10-10秒)の場合には観られない諸現象が観測されている■■■■■■■。例えば、レーザー波長(800nm)よりも遥かに短いピッチ(300nm)のナノ周期構造が固体表面に形成できること、また、原子層以下(<0.1Å)の加工深さで掘れることが見出されている。これらはいずれもフェムト秒レーザーアブレーション特有の現象であり「ナノアブレーション」と呼んでいる。特に応用面において、このフェムト秒レーザー特有の加工技術が、金属、半導体、絶縁物の全てに適用可能であることから、「物質の高付加価値化に関する研究」を進展させるものとして学界や産業界で注目され、応用研究が盛んに行われている。しかしながら、アブレーション機構は明らかにされておらず、制御性の高いナノ構造形成や高加工率の実現が課題として残されている。これらを背景に我々は、フェムト秒レーザーによる金属アブレーションの物理機構解明を明らかにすることを目的に、固体表面よりイオンが離脱する臨界強度近傍の照射強度において微少飛散するイオンの速度分布や価数分布などの特性を調べることにした。著者の所属するグループでは、フェムト秒レーザーアブレーションを図■に示した時系列で■つの過程に分類し、レーザーと金属の相互作用物理の解明に取り組んできた。①レーザー吸収過程においては、多光子吸収が支配的に起こっていることを実験的に明らかにし■■■、②レーザー誘起表面プラズマ波形成については、レーザー光の表面プラズマ波へのパラメトリック崩壊過程(バルクプラズマの場合は誘導ラマン散乱と呼ばれる)が起こっているとして④ナノ周期構造形成のレーザーフルエンス依存性を上手く説明している■■■。しかし、残る③イオン放出過程については、特に申請者が興味のあるアブレーション閾値近傍では、放出イオン数が1レーザー照射当たり1個程度という極めて少ない放出量であり、これまで実験が全く行われていない。そのためイオンのスペクトルは明らかにされておらず、放出過程の詳細な議論されてこなかった。本研究では低放出量のイオンを検出するシステムを構築し、荷電粒子放出過程を議論するうえで重要なイオンのエネルギー分布を測定することを目的とする。特に、固体写写真真位位置置■1.まえがき*京都大学 化学研究所 レーザー物質科学研究領域 准教授2.実験方法図■金属のフェムト秒レーザーアブレーション機構表面よりイオンが離脱する臨界強度近傍の照射強度において微少飛散イオンの特性を調べるためパルスカウント計測による飛行時間スペクトル測定を構築することにした。そして、実験により得られるイオンエネルギー分布のレーザーフルエンス依存性からナノ周期構造形成過程との関連を議論しフェムト秒レーザーアブレーション機構の解明を試みたので成果を報告する。実験配置を図 ■に示す。銅ターゲットに■■レーザーシステム■■■から供給されるフェムト秒レーザーを集光照射し、表面から放出するイオンの質量スペクトルとエネルギースペクトルを測定した。レーザーの中心波長は■■■■■、パルス幅は■■■■■である。レーザーは銅ターゲットの垂直軸に対して入射角度■■■°で照射した。レーザーは焦点距離■■■■■■■の両凸レンズにより、銅表面上に集光した。集光スポットサイズは集光モニターにより測定し、■■■×140µm (楕円)であった。レーザー照射により放出するイオン検出器として有効径■■■■φの■■■ff■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■を用いた。■■■■はターゲット垂直方向に距離■■■■■■離れた位置に配置した。すべての実験は■×■■−■■■■以下の真空度で行った。レーザーエネルギーは波長板と2枚の ■■■■■ の範囲で変化させた。偏光子対により、■■■■—イオンエネルギー測定では、■■レーザーパルス照射あたりに放出されるイオン量が数個以下の場合はパルスカウンティングモードを、数十個以上の場合はカレントモードでスペクトルを採用し測定を行った。パルスカウンティング測定では、 ■■■■■■回照射することにより、■■つのエネルギースペクトルを得た。ターゲットには純度■■■■■■%、多結晶の銅板を用いた。鏡面研磨した銅ターゲットをアセトンで■■■分間超音波M. Hashida- 75 -フェムト秒レーザー加工の加工効率向上にフェムト秒レーザー加工の加工効率向上に関する基礎研究関する基礎研究橋田 昌樹*橋田昌樹Report

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