FORM TECH REVIEWvol28
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𝑃𝑃𝐻𝐻=21202∙𝑉𝑉ℎ∙𝑀𝑀𝜌𝜌∙𝐴𝐴∙𝑡𝑡ででくくだだささいい■近年の環境意識の高まりから輸送機械の軽量化が重要な課題となっており,軽量かつ高強度な構造材料が求められている1).Mg 合金はその軽量性から注目される素材であるが,腐食し易いという欠点を有しており,表面処理技術の開発を含めた耐食性の向上が用途拡大のための課題となっている.Mg金属およびその合金はこれまで水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)皮膜形成により不動態化すると考えられてきたが,皮膜内層に酸化マグネシウム(MgO)層が存在し,このMgO内層が耐食性発現に寄与していることが明らかになりつつある2, 3).しかしながら,Mg合金上に形成されるMgOは一般的に多孔質となることが多く,今後のMg合金の表面処理の開発方針としては,いかに緻密かつ均質なMgO皮膜を成膜させられるかといった点が重要となる.過去の研究報告において,商用Mg合金(AZ31合金)表面にMg(OH)2皮膜を形成させた後に,大気中にて400〜500℃の温度域で酸化処理することで高い耐食性を有するMgO皮膜が形成されることが報告されている4)。ただし,400〜500℃での熱処理は表面のみならず,合金内部組織へ無視できない熱影響を与えてしまうことが問題であった。上述の背景のもと,本研究ではMg合金の耐食性向上を目的として合金表面上に緻密かつ均質な耐食MgO皮膜を成膜するレーザー表面改質技術を開発することとした5).具体的には,レーザーを照射する前にアルカリ溶液に浸漬し緻密なMg(OH)2皮膜前駆体を形成させた後にレーザー照射を行うことで,合金内部組織に熱影響を与えることなくMg(OH)2から緻密なMgOへ表面改質するプロセスの確立を目指した. ■■レーザー照射による皮膜形成方法試料として商用純Mg金属(99.9 wt%,3N-Mg)を用い,その表面には4000番の研磨紙で機械研磨を施した.アルカリ溶液処理として飽和Mg(OH)2水溶液に室温で5分,10分,15分間浸漬した後,大気中でレーザー照射処理を施した.レーザーは,Q-switch型Nd:YVO4レーザー(YVO Inc., LT-020 i-marker,平均出力11W,波長1064 nm,Q-switch周波数200 kHz)を用いた.レーザービーム径は約50 μm,写写真真位位置置■削削除除ししなないい1.はじめに2.実験方法*熊本大学 先進マグネシウム国際研究センター 准教授3.実験結果および考察レーザー走査間隔は10μmとした.レーザー走査速度は,25mm/s,50mm/s,100mm/s,200 mm/sと変化させてその影響を調査することとした. ■ 皮膜の観察および分析方法レーザー照射試料の表面皮膜の構造は、薄膜X線回折(入射角度1°)により調査し、酸化物および水酸化物の同定を行った。またX線光電子分光分析を行った。レーザー照射表面処理を施した試料の皮膜厚さの評価は、白色光共焦点顕微鏡(Lasertec model C-130 real color light scanning confocal microscope)を用いて行った。 ■■腐食試験方法レーザー照射によって形成した皮膜の耐食性を評価するために塩水浸漬試験を実施した.腐食速度PH(mm/year)は,1.0wt% NaCl水溶液中に浸漬させた際の水素発生量から次式を用いて算出した6, 7).ここで,Vh(ml)は水素発生量、M(g/mol)は試料の見掛けの原子量,ρ(g/cm3)は試料の密度,A(mm2)試料表面積,tは浸漬時間(min)を示す.腐食表面観察は,光学顕微鏡,走査型電子顕微鏡を用いて行った。■■■形成皮膜の観察3N-Mg金属板表面の光学顕微鏡観察像を図1に示す.図1(a)は研磨紙で研磨した表面,(b)は飽和Mg(OH)2水溶液に10分間浸漬した表面,(c)および(d)はレーザー照射後の表面で,レーザー走査速度はそれぞれ50 mm/sと200 mm/sである.図1(b)からMg(OH)2で覆われた表面は,黄色がかって見えることがわかる.200 mm/sレーザー走査試料表面には黄色がかった表面が残存(図中B領域)しているのに対して,50 mm/sレーザー走査試料表面には,黄色領域が残っていないことがわかった.本研究では溶融痕が残らない最大出力であった11Wでレーザー照射を行ったが,総入熱量はレーザー走査速度によって制御できる.高総入熱量(低レーザー走査速度)は表面の色を黄色から黄土色へ変化させることがわかった.(1)M. Yamasaki- 71 -Mg合金表面へのレーザー照射による■■合金表面へのレーザー照射による高耐食MgO皮膜形成高耐食■■■皮膜形成ための表面改質山﨑 倫昭*山崎倫昭Report

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