6.まとめ謝辞参考文献かとなっている.さらに,用いたパルス波形はいずれも同一のパルスエネルギーとなっていることから,パルス幅が長いほど最大ピーク以外のステップの出力が低下する.このことを考慮すると,パルス幅が長いほど照射エネルギーが時間的に分散してレーザ光照射部の最高到達温度が低くなった結果,吸収率が上昇したものと考えられる.また,キーホール型溶接の場合もパルス幅が長いほど光吸収率が上昇する傾向にある.前述の通り,キーホール型溶接の場合,レーザ光はキーホールの内壁で多重反射されながら中心部へ導光されるため,熱伝導型と比べて試料の光吸収率は上昇する.したがって,パルス幅が長いほどキーホールの持続時間が長くなり,このために光吸収率が上昇したと考えられる.図9波長532nmを用いた銅のレーザ溶接実験においてパルス波形が光吸収率に及ぼす影響図7で示した加工はいずれもキーホール型溶接となっていたことから図9の右側に示した一群がこの加工結果に対応する光吸収率である.パルス幅2.4msである3つのパルス波形Later P.p.,Middle P.p.,Early P.p.を比較すると,溶込み深さおよび光吸収率はいずれもLater P.p.>Middle P.p.>Early P.p.の順に大きくなっており,両者の間に正の相関があることがわかる.また,最大ピーク出力が前半に位置するパルス幅の異なる3つのパルス波形Early P.p.,Early P.p.τ3.2,Early P.p. τ4.0を比較すると,これらも溶込み深さおよび光吸収率に正の相関性があり,両者の値はEarly P.p. τ4.0>Early P.p. τ3.2>Early P.p.とパルス幅が長くなる順に光吸収率も大きくなっている.したがって,ある程度の相似性を有したパルス波形同士であれば溶込み深さと光吸収率の間に相関性があり,光吸収率が大きいほど深い溶込みが得られる.本実験で実施した光吸収率の測定方法では,レーザ光照射中の試料に外部から全く影響を与えないため,加工しながら光吸収率を測定することによって加工を行った試料の溶込み深さを推定することが可能になると考えられる.(2)波長532nmにおいても波長1064nmと同様,熱伝(3)照射エネルギーが同一であってもパルス波形によって加工結果に変化が生じ,前半に最大ピーク出力を(4)非溶融状態においてパルス波形は光吸収率に影響を及ぼさないが,熱伝導型およびキーホール型溶接で(5)パルス波形によって光吸収率は異なり,相似性をもつパルス波形同士であれば光吸収率と溶込み深さの波長532nmおよび波長1064nmのミリ秒パルスレーザを用いた銅の微細レーザ溶接法において,光吸収特性や溶け込み深さ安定化のための適切な入熱方法に関して検討した.本研究で得られた主な結言は以下のとおりである.(1)銅の光吸収率は波長や加工形態によって異なり,非溶融の条件では波長532nmの光吸収率は波長1064nmに比べ5倍以上高い値を示す.しかし,キーホールの発生をともなう場合は波長532nmの方が高い光吸収率を示すものの,波長1064nmに対する増加率は約1.7倍と低くなる.導型からキーホール型へ溶接形態が変化することで,その光吸収率は増大する.有し,かつパルス幅の長いパルス波形を用いることで.ポロシティの残留が少なく溶込みの深い良好な加工結果が得られる.はパルス幅の長い方が光吸収率は増大する.間に正の相関関係を示す.しかし,パルス幅も波形形状も大きく異なるパルス波形同士では,光吸収率と溶込み深さに相似関係は示されない.本研究の一部は,公益財団法人天田財団からの研究助成により実施した研究に基づいていることを付記するとともに,同財団に感謝いたします.1)金属材料活用事典編集委員会:金属材料活用事典,(2000), pp.74-77, 648-650,産業調査会.2)永井治彦:増強改訂版レーザプロセス技術,(2008), pp.64-6,オプトロニクス社8.3)国立天文台編:理科年表1990年版,(1990), pp.99,丸善株式会社.4)S. Engler, R. Ramsayer and R. Poprawe : Process Studies on Laser Welding of Copper with Brilliant Green and Infrared Lasers, Physics Procedia, 12, (2011) 339–346.5)F. Otte, S. Pamin, J. Hermsdorf, D. Kracht and R. Kling : Enhancement of Process Stability for Laser Spot Micro Welding by Using 532 nm Radiation, Proceedings of LAMP2009, (2009) #09-114.6)宮本勇:レーザ溶接(1),第40回レーザ熱加工研究会論文集,(1997), pp.93-102.- 70 -
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