5.パルス波形がプロセス特性に及ぼす影響考えられる.一方,非溶融から熱伝導型の溶接形態においてはそれとは逆に,溶け込み深さが増大するにつれて光吸収率は低下した.図4波長532nmを用いた銅のレーザ溶接実験における光吸収率と溶け込み深さ図5波長532nmを用いた異なるプロセス形態における銅のレーザ光照射痕図6は波長1064nmのパルスNd:YAGレーザと波長532nmのパルスグリーンNd:YAGレーザの銅に対する光吸収率の温度依存性の測定結果を示す.最高温度を773Kとして100K刻みで5設定と常温(295K)の合計6設定の温度において測定を行い、各条件で5回ずつ測定した吸収率の平均値を算出した.測定は両波長ともパルス幅4ms,ピーク出力0.46kWの山型波形を用いて行い,レーザ光によって供給されたエネルギーによる試料の温度上昇を避けるために照射エネルギーの低い非溶融の条件とした.図より,試料の光吸収率は僅かではあるが温度によって変化し,さらにその変化する傾向が波長によって異なっていることがわかる.常温から500K程度まではいずれの波長においても光吸収率はほぼ一定の値を示しており大きな変化は見られない.しかし,500Kを超える温度域においては,波長1064nmのパルスNd:YAGレーザでは試料の温度上昇と共に光吸収率も上昇しているが,波長532nmのパルスグリーンNd:YAGレーザではこれと逆に試料の温度が上昇するほど光吸収率が低下する傾向を示している.加工形態による試料の光吸収率の変化を示した図3より,波長1064nmでは非溶融に比べて熱伝導型加工の方が高い光吸収率を示しているが,波長532nmではこれと逆の傾向を示すことが確認されている.この原因は試料の光吸収率に温度依存性が影響したと考えられる.光吸収率の測定はヒータ出力の制限により773Kを上限温度としたが,熱伝導型溶接となる場合は銅の融点である1356Kを超える温度に達しているため,光吸収率の変化はさらに大きくなり,それによる影響もより明確に現れるのではないかと考えられる.図6固相状態の銅に対するレーザ光吸収率と温度の関以上の結果から,試料の光吸収率は波長のみではなく試料温度によっても変化し,その変化する傾向が波長1064nmと532nmで異なっていることから,これが加工形態による光吸収率の変化に影響を及ぼしているものと考えられる.次にパルス波形制御を用いて溶融状態を制御することでより高効率な光吸収の実現が可能ではないかと考え,最適なパルス波形を検討した.照射するレーザパルスの波形は,パルスエネルギー2J/pulse,パルス幅2.4ms,ピーク出力1.2kWに統一した山型波形とし,最大ピーク出力の時間的位置を変化させた.さらに,それらのパルス波形の中で最も良好な加工結果の得られたものに対して,パルスエネルギーを一定としたままでパルス幅を変更してその変化を検証した.加工は各パルス波形で5回ずつ行い,レーザ光を照射して得られた加工痕はこれまでと同様に照射面および断面の観察を行った.係- 68 -
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