図2は直接照射による実験方法を示しており,集光レンズf=60mmを用いてスポット直径100µmを得た.いずれの場合においても,レーザ光を積分球内の試料に照射し,削削除除ししなないいででくくだだささいい 近年,電気電子制御技術の発達によりオール電化住宅,ハイブリットカー,電気自動車などの普及が進んでいる.また,持続的な社会の発展を実現するためには,電気エネルギーを効率的に利用する必要があり,優れた導電特性を有する銅の接合に関する要求が増大している1).しかし,従来の溶接法では銅の高い熱伝導性のために吸収された熱は急速に母材側に拡散し,接合不良が生じやすいことなどが問題となっている.このため,熱が拡散しても入熱部分を溶融させるために,エネルギー密度が高く,かつ非接触で微細な接合が実現できるレーザ溶接法が注目されている2).近赤外光に属する波長1064nmのNd:YAGレーザの基本波では,銅に対する光吸収率は約1.5%,波長532nmの第二高調波は約35.6%の吸収率を示しており3),波長変換により短波長化することによって光吸収率は約24倍と大幅に向上することから,銅に対しては波長532nmのNd:YAGレーザの第二高調波の方が高効率な加工が期待できる4, 5).また,微細溶接を行うためにはマイクロ秒程度のパルスレーザが有効であるが,Nd:YAGレーザの第二高調波である波長532nmを用いた銅に対する微細溶接特性はまだ明らかとなっていない点が多い.そこで,本研究ではLD励起パルスNd:YAGレーザを第二高調波に変換し,得られる波長532nmのパルスグリーンYAGレーザ,および比較のために波長1064nmの基本波を用いて非溶融,熱伝導型,キーホール型溶接における光吸収率を明らかにし,レーザ光波長とプロセス形態の関係性も議論した.また,波長532nmのNd:YAGレーザの第二高調波を用いたとしても,銅の溶接においては溶け込み深さが突発的に変動することが報告されており,特に微細溶接においては溶け込み深さの精密な制御が求められる。そこで,ミリ秒パルスレーザを用いた銅の微細レーザ溶接法において,溶け込み深さ安定化のための適切な入熱方法も検討した.使用したレーザ発振器は,直接変調方式のLD励起パルス型Nd:YAGレーザであり,YAGロッドから出力された波長1064nmの基本波を共振器内部の非線形光学結晶を通過させることで波長532nmの第二高調波を得る.その後,ハ写写真真位位置置 1.はじめに2.実験方法*岡山大学 大学院自然科学研究科 准教授ーモニックセパレータを介して第二高調波のみを出力することが可能である.図1は光ファイバを用いた実験方法を示しており,レーザ光の伝送にはコア直径100µmのSI型光ファイバ及び,コリメーションレンズf=30mm,集光レンズf=60mmを用いて焦点にてスポット直径200µmを得た.図1波長532nmレーザの光ファイバ伝送による直射照射システムと積分球による反射率測定方法反射光のエネルギーを計測することで銅の吸収率を求めた.なお試料には厚さ1.0mmの無酸素銅を用いた.レーザ光照射の際にはレーザ光軸に対して試料を10度傾け,焦点は試料表面に合わせた.溶接ビードの断面形状は,溶融領域を明確にするためにアンモニア水と過酸化水素水の混合液でエッチング処理を行った後に観察した.また,波長1064nmのNd:YAGレーザの基本波に関しては,発振器から出力されたレーザ光をファイバ伝送するのではなく,反射ミレーにて伝送して集光レンズf=50mmを用いてスポット直径30µmを得た.いずれのレーザ光波Y. Okamoto- 66 -銅の微細レーザ溶接における光吸収特性と銅の微細レーザ溶接のおける光吸収特性と溶け込み深さの安定化に関する検討溶け込み深さの安定化に関する検討岡本 康寛*岡本康寛Report
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