FORM TECH REVIEWvol28
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*京都大学 教授(化学研究所附属先端ビームナノ科学センター/理学研究科物理学・宇宙物理学専攻)公益財団法人天田財団は、1987年に株式会社アマダ(現在の株式会社アマダホールディングス)の創業者の天田勇氏の個人資産寄附を基に財団法人天田金属加工機械技術振興財団として設立され、金属等の塑性加工分野における研究開発助成事業と普及啓発事業が開始されたのが原点です。以来今日まで、常に日本の将来の「モノづくり」のための研究開発基盤強化を支援すべく、公益事業により社会貢献しております。日本学術振興会による光の日の制定(2006年)や国際連合の国際光年の宣言(2015年)など、国内外にて「光とその応用技術」の様々な分野での重要性が謳われていますが、天田財団は「モノづくり」分野においても光の重要性を早くから認識し、2007年からレーザプロセッシング分野の研究に対しても助成・普及啓発事業を始めました。2011年に内閣府より公益財団法人としての認可を受け、2017年に創立30周年を迎えました。2015〜2017年の創立30周年記念事業では、重点研究開発助成A(グループ研究)、B(個人研究)が加えられ、研究開発助成が一層強化され大幅な採択件数増となりました。記念事業を通じての事業の発展を受けて、記念事業期間終了後の2018年には、個人研究向けの重点研究開発助成Bを重点研究開発助成(最大助成額10,000千円)として継続するとともに、一般研究開発助成についても最大助成額を3,000千円に増額しました。このような助成事業強化と呼応するように申請件数が急増して、当該分野の研究開発への支援貢献が一層高まってきています。2018年度のレーザプロセッシング分野の助成公募では、研究課題を以下のようにしました。• レーザ加工におけるプロセス現象の解明又はプロセスモニタリング• 半導体レーザ(青色レーザダイオードを含む)による金属の直接加工• 加工に及ぼすレーザの波長、パルス幅又は ビーム整形の効果• 3次元積層造形法の開発とプロセスの解析・評価• 高出力レーザによる高速リモート加工• レーザプロセッシング用の高品質集光光学系、スキャナー等のビーム走査・制御デバイスの開発• 異種材料のレーザ溶接、又は接合• 高効率・高品質レーザ加工法の開発、又は シミュレーション• レーザプロセッシングの医用応用(レーザ治療は除く)• レーザプロセッシングの高性能・高度化のための全体装置開発・改良に必要な(或いは繋がる)技術(レーザ光源、ビームデリバリー、AI、及びIoT等を含む)• 材料表面の改質・表面構造付与・表面(層)除去加工• 産業界で注目される先端材料のレーザプロセッシング• 産業応用を目指した高強度ピコ秒・フェムト秒レーザプロセッシング• レーザ加工に対するOCT(光干渉診断法)技術の適用及び展開 (キーホール深さ計測等含む)• レーザ加工における安全技術の開発年々、研究課題が増えていますが、これはレーザプロセッシングが光源、素過程から応用までの複合科学技術であり、様々な視点から捉えると可能性の大きさを示していることにもなります。天田財団では、当初より「レーザ加工」ではなく「レーザプロセッシング」と表現していますのは、レーザによるモノづくりの多様性と可能性を重要視した表れと考えています。物理現象を支配する最も重要な力は電磁力であり、電磁力に作用する素量は電荷ですが、大きい電荷をもつ最も軽いレプトン(素粒子)は電子です。よって、物性、化学、生物などの分野で論じられる総ての現象の主役は電子が担っております。しかし、この電磁力のゲージ粒子(相互作用交換粒子)は光子です。つまり、総ての現象において光子は電子と同様に重要です。しかし、電子工学をはじめ電子を操作する科学・技術が今日まで飛躍的に発展してきた中、光子工学はそれには全く及びませんでした。その理由は、光子を能動的に制御して扱う術がなかったためです。そこに- 63 -説苑各種レーザプロセッシングの現状と発展阪部 周二*S. Sakabe

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