°,角触接°,角触接 00268 図13■種々の粒子を投射材に用いた斜投射FPPにより ■ 形成されたうね状構造の純水に対する接触角 4うねの高さ,m謝■辞■参考文献■の存在よりもむしろ,図10で述べたような,階層的なテクスチャ,すなわちうね構造の表面へ重畳した微細な凹凸の有無によって決定付けられていた可能性があると考えられる.粗面における濡れ性を記述するモデルとして,Cassie-Baxterの理論7)が知られている.このモデルは,液滴が粗面の凹部に完全に侵入しない場合には,見かけ上,固体と空気層の複合材料として振る舞って接触角が定まると要約できる.濡れの挙動がCassie-Baxterモデルに従っていた,すなわち,極めて微細な凹部が,液滴接置面に空気層を介在させたと考えれば,わずかな接触角の増加がみられたという結果を合理的に理解できるものと考えられる. 4.まとめ■■本論文では,FPPを利用した表面改質の特徴について概観した後に,斜投射FPPを利用したテクスチャリング加工とそれによって表面の濡れ性制御を図った研究について述べた.斜投射FPPにおけるうね状構造形成は,アルミニウム,鉄鋼材料やチタンなど各種の金属材料で普遍的に生じる現象であること,形成される構造の寸法は,投射時間や投射材の材質・形状などの条件の変化を通して,ある範囲で制御することができることを明らかにした.なかでも例えば,微細なホワイトアルミナ粒子を投射した場合には,とくに寸法の小さな(高さ一桁mオーダー)うね状構造の形成が可能である.なお,このスケールの凹凸は,トライボロジー分野における潤滑性向上にも効果があるとされ,本研究から得られた知見の応用先として期待できる. 濡れ性の制御に関しては,うね状構造の存在そのものよりも,その表面に重畳して存在する粒子表面構造が転写されてできた微細な凹凸が,接触角へ大きな影響を及ぼしていた.すなわち,表面にごく微細な凹部が重畳していることで,その表面の親水性は低下(寄り疎水性に近づく)する可能性を見出した.このような表面は,表面に微細な凹凸を有する粒子やグリット形状の粒子を用いた場合に作製することが可能である.以上より,斜投射FPPによって表面の濡れ性を制御する上で,条件選定や作製すべき微細構造の設計を行うに当たっての指針となる知見を得ることができた. 本研究は公益財団法人天田財団平成27年度一般研究開発助成AF-2015031による補助を受けて実施した.ここに謝意を表する. 鋼粒子ガラス粒子ホワイトアルミナ粒子鋼粒子ガラス粒子ホワイトアルミナ粒子た接触角を示している.同図より,接触角はうねピッチ,うね高さのいずれとの間にも明瞭な相関性が認められず,むしろ用いた粒子の種類によって接触角が異なるように判断された.すなわち,鋼粒子およびホワイトアルミナ粒子を投射した場合には,研磨面よりもやや高い接触角を示しているのに対し,ガラスビーズ投射面のそれは研磨面と近い値であった.鋼粒子投射面,ホワイトアルミナ投射面に関しては,接触角は90°をわずかに下回ってはいるものの,研磨面と比べると,より疎水性に近い性質を示したものと判断できる. 鋼粒子投射面およびホワイトアルミナ粒子投射面において,研磨面と比べて接触角が増大した要因について考察を加える.まず,同等の寸法のうねを形成したガラスビーズ投射面では接触角の変化が認められなかったことを考慮すると,微細周期構造を形成したことが主たる要因であるとは断言しにくい.比較のため,一般的なFPP(投射角度90°,鋼粒子70m)で作製された粗面における接触角を測定したところ,およそ80°であった.その値は,図13に示した鋼粒子斜投射FPP処理面でのそれと概ね同等であった. 斜投射FPP処理面が示す濡れ性は,うね状の周期構造100908070605040302010050(a) うねのピッチと接触角の関係 1009080706050403020100(b) うねの高さと接触角の関係 うねのピッチ,m10015020010250121) Y. Kameyama, H. Ohmori, H. Kasuga, T. Kato, Fabrication of micro-textured and plateau-processed functional surface by angled fine particle peening followed by precision grinding, Annals of the CIRP, 64, 1 (2015) 549-552. - 53 -
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