FORM TECH REVIEWvol28
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図6■斜投射FPPによるうね状構造の ■■ 形成メカニズムに関する仮説1) (被処理材材質:A6061アルミ合金) 図7■斜投射FPP実験に用いた投射材の光学顕微鏡写真 また,斜投射FPP(投射角度15°)の条件に応じたうね状構造の形状,寸法の変化についても,被処理材にA6061アルミニウム合金を用い,投射材に粒径70mの鋼粒子を用いた場合において系統的な検討を行っている.結果の概略を述べると,うね状構造は投射時間とともに寸法が増大すること,同じ質量の粒子を投射するのであれば長時間かけて(すなわち,単位時間当たりの粒子投射量を少なく設定して)斜投射FPPを行った方が,寸法の大きなうねが形成されることなどがわかっている.これまでに実験を行った範囲では,うねの寸法は概ねピッチ(隣接するうね同士の平均間隔)が100~300m,高さ(個々のうねの頂部から谷底までの高さの平均)が10~30mの範囲であった1). ただしこれまでの研究では,上記以外の被処理材を用いた場合,あるいは投射材の種類や寸法を変化させた場合のうね形成挙動については,まだ十分に調べられていない.そこで次節では,これらの条件がうね状構造の形成挙動に及ぼす影響について明らかにする. ■■■ ■種々の被処理材,投射材を用いた斜投射■■■によるうね状構造■供試材には各種のアルミ材および鋼材を,また投射材には鋼粒子(Steel),ホワイトアルミナ粒子(WA),ガラス粒子(GB)を,それぞれ用いて斜投射FPPを施し,各条件において形成されるうね状構造について形状・寸法を評価する実験を行った.用いた粒子の様相を図7に示す.ホワイトアルミナ粒子は一般的な砥粒として供給されているもので,#360と#1000の二種類の番手を利用した.形状はグリット状である.またガラス粒子,鋼粒子はそれぞれ球形を呈しており,前者は#40,#200の二種類の番手を,後者については平均粒径が異なる4種類,すなわち50m,70m,100m,200mのものを用いた. いずれの条件とも,FPPはノズル径6mmの吸引式ピーニング装置を用いて行った.投射角度は15°(斜投射FPP)および90°(一般的なFPP)とで比較を行った.その他の条件としては,吸引式装置を用いた実験では,投射圧力を0.65MPaまたは0.5MPa,ノズルと被加工面との距離を30mmとし,投射時間を系統的に変化させた.斜投射FPPを施した後,試験片表面に形成されたうね状構造について,光学顕微鏡観察とうねのピッチ,高さの評価を行った.なお,ピッチ,高さは,触針式粗さ計より得た断面曲線より計測している. ■まず,斜投射FPPの条件を種々に変化させた場合のうね寸法の変化について検討を加えた.図86)に,粒径が異なる鋼粒子を用いて斜投射FPP(投射圧力0.65MPa)を施したA6061アルミ材表面の光学顕微鏡観察結果および断面曲線より計測したうねの幅,高さをまとめて示す.光学顕微鏡観察結果において,粒子の流れは図の上から下に向いている.概ねいずれの条件とも,粒子の流れと直交する向きのうね状微細構造が観察された.その寸法は投射時間の増加とともに増大していることがわかる.ただし,粒径が大きく時間が短い条件や粒径が小さく時間が長い条件では,光学顕微鏡観察では周期的微細構造の形成が明瞭には認められなかった.前者の場合は構造が発達途上の段階,後者の場合は一度微細周期構造が形成されたものの,粒子の衝突が繰り返されるうちに凸部・凹部の配列が乱れ周期的な凹凸が不明瞭になった結果と考えられる.うね状構造を形成するには,ある投射時間の範囲内で条件を設定することが効果的であると見出された.一方,粒径の影響についていえば,寸法の大きな投射材を用いても必ずしも大きなうねが形成されるわけではなく,むしろ粒径が小さな粒子の方が寸法の大きなうねを形成した場合もあった(たと(c) q=90°(normal-FPP)Vertically indented dentsLongitudinal ridgeformed by linking ofDirectionless texturedue to overlapping individual dentsof dentsSteel(70μm) - 50 -WA#360 GB#40 WA#1000 GB#200 Steel(50μm) (a) q=15°, 45°Growthof bumpsdue to micro-ploughing(b) q=75°Few bumps formationbeside eroded dentsTransverse ridgedue topinning of material flowaround the bumps

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