FORM TECH REVIEWvol28
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図5に,投射角度(FPP被処理面とノズル軸とがなす角度)を系統的に変化させてFPPを施した表面を光学顕微鏡および走査型白色光干渉式非接触表面形状測定機を用数係擦摩図4FPPでCBを移着させたSUS304鋼表面の摩擦係数4)図5投射角度が表面微細構造形成に及ぼす影響3)FPP未処理FPP処理で改質したSUS304鋼表面の巨視的様相(投射角度90°・・・一般的なFPP)CS5:FPP処理・CB移着,投射時間5s.CS60:FPP処理・CB移着,投射時間60s.S5:FPP処理・CB移着無し,投射時間5s.As-polished:FPP未処理.(いずれも投射角度90°)FPP処理FPP処理CB移着図3 カーボンブラック(CB)の移着を狙いとしたCB移着無しすなわち,ある優れた性質を示す物質をFPPの投射材に適用することで,その物質をFPP被処理面へ移着させようという考えである.たとえば図3,4はそれぞれ,FPPによってカーボンブラック(CB)粉末を移着させたSUS304鋼製試験片の代表的な様相と,往復摺動式摩擦試験によってその試験片の摩擦係数を評価した結果である3).FPPに当たっては,カーボンブラック粉末を鋼微粒子の表面へ担持させた投射材(複合粒子)を作製し使用した.試験片の表面は移着したカーボンブラックによって黒色を呈しており,その表面の摩擦係数の値は摩擦試験の終始にわたっておよそ0.3 ~ 0.4程度の比較的低い値を示している.これに対して,カーボンブラックが移着していないFPP処理面では,摩擦係数は最終的に0.7程度と高い値を示しており,カーボンブラックを移着させたことが摩擦特性の改善をもたらしていたものと理解できる.カーボンブラックを移着させた表面が低い摩擦係数を示したメカニズムとしては,カーボンブラックが,相手材との接触面に介在して潤滑作用を発揮したためと考えている.このような粒子の移着現象は,次章以降で述べる斜投射FPPにおいても生じることが確かめられている1).つまりFPPでは,条件を工夫することで表面に周期的微細構造を形成し,同時に有益な特性を示す成分を移着させられる可能性がある.いる著者らの知見1)~3)を整理する.いて観察・解析した結果を示す.まず,一般的な条件でのFPP,すなわち投射角度が90°の場合には,不規則に凸部と凹部が並んだ粗面が形成されている.凹凸の並び方には,特に規則性や異方性は見出せない.このように一般的なFPPでは,異方性を有さない粗面が形成される.これに対し二つの条件の斜投射FPPでは,周期性,異方性を有する構造が形成されている.投射角度が小さい(15°)条件では,うね状構造は粒子の投射方向に直交して周期的に配列していた.投射角度が比較的大きな場合(75°)には,凹凸の向きは15°の場合と異なり粒子投射方向と概ね平行であった.すなわち,投射角度に応じて凹凸の配列方向は変化する.このようなうね状構造がどのように形成されるかという点について,現時点で考えているシナリオを図6に模式的に描いた1).まず,投射角度が比較的小さい場合に形成されるうねは,個々の粒子が材料を掘り起こすようにしてできる隆起部を前駆体として形成されたものだと考えられる.既成の衝突痕の近傍へ別の粒子が衝突したとき,その粒子によって塑性流動した材料は既存の隆起部にピン止めされ,結果的に隆起部が配列していくというメカニズムを推察している.これに対し,比較的大きな投射角度(75°)の場合には,粒子が材料を掘り起こす作用は少なく,この場合には衝突痕端部には明瞭な隆起部は形成されないものと考えられる.この場合に観察されたうね状構造は,粒子の衝突痕が粒子の運動方向に連結した結果形成されていたものと思われる.3.斜投射FPPによるテクスチャリング加工とそれを通した濡れ性制御の試み■■■斜投射■■■によるこれまでの研究本節ではまず,斜投射FPPに関してこれまで得られて1000(被処理材材質:A6061アルミ合金)粒子の運動方向粒子の運動方向粒子の運動方向粒子の運動方向0.80.70.60.50.40.30.20.10As-polished1002003000S5CS5CS60500600400往復摺動回数700800900投射角度90°(通常のFPP)投射角度75°(斜投射FPP)0.5mm0.5mm投射角度15°(斜投射FPP)0.5mm- 49 -

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