FORM TECH REVIEWvol28
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図1 斜投射FPP処理装置の概観図2斜投射FPPで形成されるうね状の周期的微細構造チッピ削削除除ししなないいででくくだだささいい近年,微細な溝,窪み,突起などの形状を規則的に設けた表面構造を作製し,種々の機械材料の表面へ付加価値をもたらす技術が脚光を浴びている.このような技術は,しばしばテクスチャリング加工と呼ばれている.例えば,自動車産業では,摺動摩擦抵抗の低減を通して燃費向上を図るための重要な技術として,ピストンスカート部やピストンリング表面へテクスチャリング加工が適用されている.周期的微細構造およびそれを作製するためのテクスチャ加工は,今後ますます産業界での重要性が高まっていくことが想定される.このような背景に基づき著者は,新たなテクスチャリング加工法を提案する.具体的には,塑性加工技術の一種であり,微粒子を材料へ向けて高速投射して表面改質を行う方法である,微粒子ピーニング(Fine Particle Peening: FPP)に注目している.FPPにおいて粒子を被加工面に対して浅い角度から投射(図1,以下では斜投射FPPと称する)すると,周期的なうね状の凹凸(図2)が形成される1)~3).この現象を利用して,周期的微細構造を形成しようというものである.粒子の流れ処理装置の概観写写真真位位置置■1.まえがき*東京都市大学 工学部機械工学科 准教授粒子投射ノズル被処理材2.FPPの概要FPPは当初,自動車部品や塑性加工用金型の疲労寿命改善のための技術として普及がなされてきた.機械材料の疲今日実用化されているテクスチャリング加工法には,マスキングを施したのちにブラスト加工,エッチング処理や蒸着成膜を行うことによって,構造のパターニングを行う原理のものも少なくない.これに対して,提案する斜投射FPPでは,微粒子が被加工面へ衝突したときに作られる変形痕が自己組織的に配列して構造が形成されていると考えられ,マスク不要でパターニングが可能である.この点は,実用的,学術的の両観点から大きな特徴といえる.本論文ではまず,FPPの概要についてこれまでの研究成果に基づき概要を説明する.FPPではテクスチャリング加工のほかにも,固体潤滑成分を被処理面へ付与することで摩擦の低減を図る4)ことなども可能である.この効果は本特集号の趣旨とも合致していることから,著者らの過去の研究成果をもとに簡単に紹介したい.その上で,斜投射FPPによって任意の寸法,形状のうね状構造を形成するための知見の蓄積,ならびに斜投射FPPにより形成した微細構造が表面の濡れ性に及ぼす影響の解明を目的とした研究の成果について述べる.将来的には,うね構造の形成を通して濡れ性の制御が行える表面改質の提案が目標である.このような技術は,例えば,防汚性を発揮するために表面の濡れ性を高度に制御することが求められる金型やエネルギー機器(太陽光パネルなど)への適用が期待されるものである.労強度向上のための表面改質法の一種として,ショットピーニングは古くから知られている.FPPの改質原理は従来からあるショットピーニングと本質的には同じである.ただし,FPPの場合には,ショットピーニングと比較して微細な投射材(一般に粒径200m以下とされる)が投射される.その結果,最表面層に改質効果が集中的に表れると高さいわれている.一方,FPPを施した表面には,投射した微粒子あるいはその成分がわずかに残存する(著者はこの現象を移着と呼んでいる)5).このような作用は,素材の清浄性という点では忌避される場合もあるが,著者らはむしろ,表面改質原理として積極的に応用できるものであると考えている.Y. Kameyama1mm- 48 -濡れ性制御への応用亀山 雄高*亀山雄高粒子衝突痕の自己組織化による周期的微細構造の微細構造の形成を狙いとした斜投射微粒子形成を狙いとした斜投射微粒子ピーニングの開発とピーニングの開発と濡れ性制御への応用粒子衝突痕の自己組織化による周期的Review

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