FORM TECH REVIEWvol28
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図27熱間鍛造の摩擦係数に影響する図26潤滑膜厚さと摩擦係数1)北村憲彦,天田金属加工機械技術振興財団研究概2)北村憲彦,天田財団助成研究成果報告書,31(2018),3)日本塑性加工学会編:塑性加工におけるトライボロ4)樫村徳俊ら,塑性と加工,41-469(2000),100-114.5)石橋格ら,塑性と加工,52-611(2011),1263-1267.数係帰回偏準標μave:ストローク3~10mmで平均化した摩擦係数の値μ増加μ減少4.まとめ謝辞参考文献ク-摩擦係数線図では.潤滑膜の厚みをt= 5, 16, 67 µm ,無潤滑(t=0 )であった.ストロークが10 mmくらいまでの押込み始めでは薄い潤滑膜でも摩擦低減効果が認められる.このストロークまでは潤滑膜厚に関わらず,安定した摩擦係数µを示す.それらのµは16 µmで最も低い.潤滑膜への伝熱とそれに伴う潤滑剤の質の変化が生じていると思われる.ストロークが20 mmまで進むと,潤滑膜厚さt= 16 µmではμ= 0.1と低くなる.これは一般的に熱間鍛造で高性能な黒鉛系潤滑剤と同等の高い摩擦低減性能といえる.さらにストロークが30 mm以降では,t= 16 µmの摩擦は増加し,安定しているt= 67 µmの摩擦係数より高くなる.潤滑膜が薄いほど,短い摩擦距離で摩擦係数が増加し始める.潤滑膜の短い段階で潤滑膜の破断が起こりやすいと推定される.そこで,ストローク3~10 mmにおける摩擦係数の違いが顕著で,比較的安定しているので,この間の平均摩擦係数を,潤滑膜厚さごとに図26に示す.今回の摩擦条件では潤滑膜厚さが約20 µm 付近において摩擦係数が最小になっている.これ以下潤滑膜厚さでは激しい焼付きも生じており,摩擦低減には不十分である.これ以上の潤滑膜厚さでは,少し摩擦が増加する傾向にある.以上のことから,摩擦条件と潤滑剤の特性によって,それらに応じた摩擦係数を最小にするような最適な潤滑膜厚みが求められることを示唆している.(d) 重回帰分析の標準偏回帰係数上記(a)~(c)以外の影響因子なども調べ,重回帰分析した.ここでは,因子としては素材材料,型表面処理,型表面粗さ,ツールマーク方向,潤滑膜厚さ,摩擦速度,温度,面圧の影響を試験した.その結果,摩擦係数に影響する因子を図27に示す.ここで標準偏回帰係数の絶対値0.5 以上となり影響が強いのは,潤滑膜厚さ,摩擦速度,摩擦面付近の温度である.■■■熱間鍛造における潤滑因子のまとめ熱間鍛造では,摩擦による潤滑膜の消耗を仮定し,実機で摩擦条件を包含するようにテーパープラグ通し試験と回転摩擦試験を行った.その結果,熱間鍛造の工具と材料との間の摩擦係数に対して,潤滑膜厚,摩擦速度,温度が強く影響し,摩擦係数を最少とする潤滑膜厚があることを例示できた.高い精度と材料ロスの少ない強度部品を経済的に成形することを目指して,ここでは冷間しごき加工と熱間鍛造加工の潤滑を取り上げた.それぞれが,より高性能化と環境負荷低減にも取り組まねばならない.そのためには加工法,条件ごとのメカニズム解明も必要である.また,型,鍛圧機械,工程などの技術とも連携した潤滑システムも創出されるであろう.今後のブレークスルーが楽しみである.以上の一連の研究においては,天田財団の研究助成により実施したことを記して,謝意を表します.また,冷間しごき加工については実機試験では(株)野口製作所に多大なご協力を頂きました.また,潤滑油は出光興産(株),新日本石油(株),大同化学工業(株),中京化成工業(株),日本工作油(株),ユシロ化学工業(株)から快くご提供いただき,深く感謝申し上げます.名古屋工業大学の学生各位には,多くの実験・測定・観察に膨大な時間と大変な努力を頂きましたこと,深く感謝します.熱間鍛造の潤滑では,トヨタ自動車(株),豊田高等専門学校の淺井一仁博士にも多くの協力を得たこと深く感謝申し上げます.要報告書,22(2010),6-11.ジ(1988),67-75,コロナ社摩擦面温度トライボロジー因子ツールTool マークdirection方向テーパープラグ通し151.00.80.60.40.20-0.2-0.4-0.6-0.8-1.0146-149.TemperatureLubricant 潤滑膜滑りthicknessVelocity厚さ速度Surface工具表roughness面粗さ- 19 -

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