FORM TECH REVIEWvol28
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図17■■テーパープラグ通し試験と回転摩擦試験機の試験 図15■熱間鍛造中の型と潤滑剤と材料のイメージ ■ ■図16は,自動車用大型ギアブランクの熱間鍛造品について,面圧と接触部の温度を数値解析した結果である.こ図19に荷重-ストローク線図を示す.薄い試験片ではテーパープラグでの面圧増加が少なく,壁が厚い場合には圧圧面[P圧面[ erusserP]aPM0500■ 図16■熱間鍛造の面圧と接触温度の推定(FEM結果) これらの条件を具現できる試験法として,テーパープラグ通し試験1) と回転摩擦試験2)を用いた.その結果,図17の両試験が相互に試験範囲を補って,実機の熱間鍛造の摩擦界面での条件を補完できるようにした. 0 ]aPM この複雑な状態を便宜的に摩擦係数で代表させれば,CAEや潤滑剤開発,塗布条件の最適化などに役立つであろう. 範囲 ■■■■テーパープラグ通し試験■テーパープラグと試験片との間の摩擦だけが荷重に反映されやすいように外周の拘束をなくした.図18のような,同じ内径で異なる厚みの試験片を用いた. 力も高く,潤滑膜もダメージをうけ,ストロークが進むにつれて荷重が急増している.この結果から実際の熱間鍛造の圧力の調査結果なども考慮して,図18(A)のような厚い試験片を用いることにした.この試験後にテーパープラグを観察すると,図20に示すように潤滑剤の効果も分かりやすく,無潤滑では激しく凝着している. 潤滑剤の変化・消耗a) 溶融,分解,燃焼,酸化b) 流動する材料による摩耗する.省資源だけでなく,省エネルギの点でも課題が多い.高温の材料に接触する型も,その熱で軟化や割れが生じやすいため,型寿命も冷間鍛造に比べると桁違いに短い.このように熱間鍛造では,材料歩留まりと型寿命が大きな課題である. 日本塑性加工学会でも熱間鍛造の型寿命向上は,幾度も取り上げられてきたテーマである.例えば,第209回塑性加工シンポジウム(2002年)での議論では,型材だけでなく型形状によって異なる熱負荷と応力負荷を適切に評価すること12)も議論されている. その後,型応力低減のための方案の創成に注目して,鍛造型寿命向上にCAEを駆使した最適化13) が解説され,実用的な成果も上げ,注目を集めた.熱間の潤滑剤そのものの吹き付けや摩擦界面での直接その場観察や潤滑剤の熱分析を総合した取り組み14)も精力的に行われている.また,最近の熱間鍛造の潤滑剤と酸化スケール抑制剤15)についても分かりやすく解説されている. 以上のように熱間鍛造では,型に塗布された潤滑剤が熱負荷と応力負荷を緩和する.材料・潤滑剤・型が接触するイメージを図15に示す.潤滑剤が被覆された型表面に高温の材料が降伏応力を越える圧力で接触しながら擦ることになる.潤滑剤にとっては急な温度上昇による溶融,分解,燃焼を伴い,一種の摩耗のように消耗すると推測される. 上型高温の材料下型ここでは,実際の熱間鍛造における摩擦接触条件を包含 する範囲を調査し,その条件が再現できる試験法を使って,摩擦係数に及ぼすトライボロジー因子の影響を整理した. ■■ ■熱間鍛造の摩擦条件の調査結果(代表例)■れらの解析結果を参考に,摩擦条件の範囲を設定した.すなわち,ビレットの加熱温度は1200℃以下を前提とし,滑り摩擦,型との接触時間,材料内部から表面への伝熱,潤滑による熱伝達や断熱の影響を考慮したFEM解析により界面のトライボロジー因子を定量的に推定した.その結果,接触界面温度は,700℃~1150℃,面圧は50~400 MPa,滑り距離はほぼ0~20 mm,滑り速度は0~400 mm/s,表面積拡大比は1~4倍程度の範囲であることが分かった. ○○ProductⅠ●●ProductⅡ600500400300200100600500400300200100500WorkToolUpper dieWorkLower die600800700900接触摩擦面温度 Temperature [˚C]700900温度T[ºC]1100Tapered-plugWork100011001200- 16 -実部品■■■Workpiece

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