FORM TECH REVIEWvol28
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4.結論謝辞参考文献図13LSM/YSZハーフセル(レーザ焼結膜)のCole-Coleプロット:サイズ20mm×20mm,測定温度800,900,1000℃図14LSM/YSZハーフセルのインピーダンスプロット:サイズ20mm×20mm,炉焼成膜およびレーザ焼結膜,測定温度1000℃本手法の特長を活かしたセルデザインとしては,たとえばスタック数1の場合,シングルチャンバー型のSOFCで,同一平面上にアノードとカソードを形成するデザインが考えられる14).現在,レーザ焼結法による電解質薄膜の形成にも取り組んでおり15),電解質膜上に局所的に電極膜を形成できるようになると,マスク等が必要なく,燃料および空気の混合気体の利用,およびそれに伴うガスセパレータへのシーリング特性の要求が軽減する.また複数個のスタックを構成するには,インターコネクタ(セパレータ)が必要となるが,現段階においてセラミックスとセパレータ(たとえばステンレス基板)との焼結や接合技術の確立には至っていない.このように,グリーンテープレーザ焼結(GTLS)法は,SOFC搭載機器のスペースに適切な平板や円筒,またはそれ以外のセル形状に対応でき,多品種,少量生産型のマイクロSOFC製造技術としての可能性を持っている.またディスペンサーやスプレー塗布,溶射法などとの組み合わせも考えられ,従来のSOFC電極膜補修技術や,膜再生技術などへの発展性も有している.特に,微細なリペア技術等への応用においては,局所膜形成の特徴や時間的優位性を活用できる.SOFC用電極作製技術の確立を目指し,GTLS法による電解質材料基板上への空気極材料および燃料極材料のレーザ焼結を試みた.その結果,動作温度800~1000℃向けの電極材料を用い,レーザのパルス幅の制御を行うことで,多孔質構造を有する燃料極・空気極膜の形成を確認した.これはパルス幅の制御により,各電極材料の焼結に最適な熱量が加えられたことを示唆している.また,膜厚約12μmのグリーンテープの作製や,同一部位への複数回のレーザ照射によって,基板との密着性が改善する傾向が見られ,気孔面積率20%以上の多孔質空気極膜を形成できた.LSM電極膜断面のEDX分析結果から,比較的低エネルギ照射による多孔質LSM膜形成条件では,電極膜中のみで焼結が進行し,一方の高エネルギ照射のバルクLSM膜形成条件では,電解質基板が分解し,直上に形成したバルクLSM膜内部にまでYが混合することが明らかとなった.またバルク膜形成条件においても,造孔材の導入と走査速度のパラメータの検討で,造孔材除去により気孔を形成することで,気孔面積率約23%,剥離率2%のLSM焼結膜の形成を確認した.さらにレーザ焼結法においては,LSM粒子が結晶性を維持したまま焼結し,基板との密着性発現に寄与することを確認した.電気特性の評価の結果,レーザ焼結膜の抵抗値は,炉焼成LSM膜の5倍程度となった.これは膜内部の焼結状態に起因すると推測される.GTLS法は,少量生産型のマイクロSOFC製造技術としての可能性や,電極膜補修技術などへの発展性を有している.今後は,セル作製,マイクロSOFCとしての発電性能評価,耐久試験などの評価が課題となる.本研究は,公益財団法人天田財団からの一般研究助成により実施した研究に基づいていることを付記するとともに,同財団に感謝いたします.また,実験材料並びに作製や評価に関して多くの助言をいただいた,元茨城大学工学部超塑性工学研究センター長本橋嘉信氏ならびに茨城大学名誉教授前川克廣氏,その他,本研究に従事した皆様に感謝する.1)国立環境研究所温室効ガスインベントリオフィスウェブサイト:http://www-gio.nies.go.jp/index-j.html2)電気学会・燃料電池発電,次世代システム技術調査専門委員会編:燃料電池の技術,(2002),184-230,オーム社.3)藤代芳伸,鈴木俊男,山口十志明,濱本孝一,淡野正信,“マイクロ燃料電池製造技術開発への挑戦—革新的セラミックス集積化プロセスを活用するコンパクトS0FC—”,産総研学術ジャーナルシンセシオロジー, 44-1 (2011), 36-45.- 105 -

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