FORM TECH REVIEWvol28
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3.4LSM焼結膜のXRD回折測定XRD回折法を用いて,8-YSZ電解質基板上に形成したLSM電極膜を評価した.図11にLSMの炉焼成膜,レーザ焼結膜,仮乾燥段階(レーザ焼結前)の電極膜(LSM粒子とバインダを含む膜)のXRD回折パターンを示す.炉焼成膜においてはLSMとYSZピークが観察される.同様に,レーザ焼結膜や仮乾燥段階(レーザ焼結前)の電極膜(LSM粒子とバインダの膜)においても,LSMとYSZのピークが観察される.レーザ焼結法ではLSM粒子は結晶構造を残したまま焼結するものの,LSMピークに分布が見られることから,レーザ照射によって結晶性の歪みが生じた可能性がある.次に,レーザ焼結LSM膜を強制的に剥離し,8-YSZ基板上の物質を観察した.図11(d)にXRD回折パターンを,図12にLSM焼結膜除去後の8-YSZ基板表面のSEM像を示す.LSM膜剥離後の8-YSZ基板のXRD回折パターンでは,基板のYSZに加えてわずかながらLSMピークも確認される.図12のSEM像から,基板表面には大きさ約5μmの無数の粒子や,膜の剥離によって形成されたクレータが確認できることから,これらの粒子は,8-YSZ基板表面で焼結したLSM粒子で,焼結膜の密着性発現に寄与しているものと推測される.3.5LSM/YSZハーフセルの電気特性評価電気特性を測定するためのLSM/YSZハーフセルとして,8-YSZ基板上に,20 mm角のLSM空気極膜を形成した.パルスエネルギ0.63 mJ/pulse,ステージの走査速度は0.17 mm/s(10 mm/min)とした.また面焼結のための走査ピッチX=250μmとした.ハーフセル形成に要した時間は約160分で,1cm×1cmの電極膜形成時間は40分程度と見積もられる.形成したLSM/YSZハーフセルのインピーダンスを測定した.図13に,測定温度は800℃,900℃,1000℃の,LSM/YSZハーフセルのCole-Coleプロットを示す.その結果,抵抗値はそれぞれ28.3, 15.3, 9.8 Ωとなり,炉焼成法のLSM/YSZハーフセルの抵抗値の約1.6,1.8,2.4倍となった.図14に,測定温度1000℃の測定周波数に対する|Zim|の関係を示す.M.J.Jørgensenらは,粒子間の電子またはイオンの移動が妨げられると,測定周波数100~5000 Hzの範囲の|Zim|が大きいと推測している12).そこで,この周波数範囲の|Zim|を比較したところ,レーザ焼結膜の|Zim|値は,炉焼成膜の約5倍となった.そのため,レーザ焼結膜は,炉焼成膜よりも粒界における電子・イオン移動が阻害されていると推測される.焼結が比較的短時間で完了するレーザ焼結法では,基板界面や電極膜中のLSM粒子同士の接触面積が小さく,電子・イオン移動への抵抗が大きいと推測される.またSOFCは,長時間の高温動作で電極膜の焼結状態が変化することから,その変化を把握することも課題となる13).さらに,燃料ガスを用いた発電を実施すると,燃料ガスの拡散による抵抗値の増大も懸念され,今後は発電用セ図11レーザ焼結LSM膜のXRD回折パターン:(a) 熱処理1200℃,7h,(b) レーザ焼結LSM膜(4.38 J/cm2,0.17 mm/s),(c) 仮乾燥後のLSM膜(LSM粒子およびバインダ),(d) LSM電極膜剥離後の8-YSZ基板図12レーザ焼結LSM膜剥離後の8-YSZ基板ル製作および発電試験,耐久試験が必要となる.3.6マイクロSOFCのセルデザインこれまでに述べたように,GTLS法を利用したマイクロSOFC用局所的電極膜形成技術では,パルスレーザを集光照射することで局所的かつ選択的な焼結が可能で,セル形状に対する制限が比較的少ない.(a)全体像(b)拡大像表面のSEM像- 104 -

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