(a)炉焼成膜,熱処理1200℃,7時間(b)レーザ焼結LSM(2.2J/cm2, 0.17mm/s)(c)レーザ焼結LSM(3.2J/cm2, 0.17mm/s) (d)レーザ焼結LSM(4.4J/cm2, 0.17mm/s) 図9低速度条件下におけるLSM電極膜表面のSEM像るが,基板との密着性に関してはまだまだ十分でない.膜厚のある電極膜は基板との密着性が低い傾向にあり,さらなるパラメータ制御が重要となる.そこで,レーザ焼結法において得られたバルク膜は高い密着性を示すことに注目し,造孔材の導入とパラメータの変更で基板との密着性改善を目指しつつ多孔質膜の形成を試みた.具体的には,パルス幅1.5 msで,走査速度をこれまでの1/20程度の0.17mm/s(10 mm/min)に変化させた.また,デフォーカス量を変化させることでフルエンスを調整した.図9に,1200℃,7時間の炉焼成法で形成したLSM焼結膜および,走査速度パラメータ0.17mm/s(10 mm/min)のレーザ焼結LSM膜表面のSEM像を示す.レーザ光は写真の中央を,左から右方向に走査した.図9から,膜中の造孔材が,炉焼成やレーザ焼結時に除去され,直径3μm前後の気孔が強制的に形成されている.また目立ったクラックは観察されない.その結果,得られた焼結膜はいずれも多孔質膜で,LSM粒子のネッキングが確認される.膜厚は炉焼成膜で約30μm,レーザ焼結膜は約32μmで,気孔面積率は,炉焼成膜は約30%,図9(c)のレーザ焼結膜は約23%であった.炉焼成膜では気孔の形成は比較的均一だが,レーザ焼結膜では,図の中心部分の焼結が進行した.これは,高強度なビーム中心が走査された部分と,その周囲の部分の差が生じ,焼結の進行度に差が生じたためと推測され,その差はフルエンスの増加で顕著となった.図10に,得られた焼結膜の気孔面積率と剥離試験の結果を示す.炉焼成膜の剥離率は0.04%である一方,レーザ焼結膜の剥離率は約1.8%となった.炉焼成膜には及ばないものの,未焼結膜や従来の焼結膜の剥離率約20%から改善された.レーザ焼結法では,レーザ光は膜表面付近の材料に吸収される.高フルエンスのレーザパラメータでは,吸収や焼結と同時に放射圧によって膜の構造が破壊され,飛散する可能性が高い.したがって低フルエンスかつ低走査速度条件を用いることで,レーザ照射時の膜の破壊や飛散を抑制しつつ,熱伝導によって焼結膜内部および膜と基板界面の焼結が進行し,密着性が改善されたと考えられる.図10炉焼成条件および低走査速度条件でレーザ焼結したLSM膜の気孔率と剥離率- 103 -
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