の形成は抑制された.気孔面積率は~34%まで向上した9).一方のNiO/YSZ焼結膜の場合は,パルス幅が1.6 ms以上においてニッケルと考えられる凝集体が形成された.焼結膜に含まれるニッケルの融点が約1455℃であるため,パルス照射で,それ以上の熱量が加えられたためと推測される.またパルス幅が1.4 ms以下の条件では,この凝集体の形成が抑制され,パルス幅1.2 msのときに約36%の気孔面積率が得られている.次に,膜厚約40μmのグリーンテープに,パルス幅1.0 ms,パルスエネルギ約0.43 mJのレーザを照射して形成したLSM焼結膜の断面観察を行った.図7にFIB-SIM像を示す.ここでサンプルの傾斜が30°あるため,縦方向の実距離は横方向の2倍である.8-YSZ基板上に,わずかにコントラストの異なるLSMと推測される焼結膜が観察される.この焼結膜の膜厚は1~2μmで,焼結前の膜厚の約5%に相当する10).このように,レーザ焼結法を用いた電極膜形成において,照射パルス幅の調整で気孔面積率~30%の多孔質膜の形成が可能となり,SOFC用電極膜としての利用が考えられる.3.2LSM電極膜のEDX分析8-YSZ基板上に形成した多孔質ならびにバルクLSM焼結膜断面のEDX分析を実施した.膜厚約12μmのグリーンテープに,レーザ光を同一パスで2回照射することで測定サンプルを作製した.具体的な形成条件は,パルス幅1.2 ms,パルスエネルギ約0.18 mJ,走査速度3.3 mm/s(200 mm/min)で,1回目および2回目のデフォーカス量を,それぞれ5,5 mmもしくは2,2 mmに設定した.1回目のレーザ照射で,グリーンテープ表面から焼結が進行して膜厚が減少し,2回目のレーザ照射で,レーザのエネルギが表面の焼結膜に吸収および再加熱され,膜と基板の界面の未焼結部位の焼結が進行したと推測される.形成された多孔質LSM膜やバルクLSM膜は,簡易スクラッチ試験による膜の剥離が低減する傾向にあった.図8(a)に多孔質LSM膜のEDX分析結果を示す.表示した元素割合は,酸素を除く測定量に対する相対値である.焼結膜の膜厚は約12μmで,レーザ照射前のグリーンテープの膜厚からほとんど変化なく,膜の表面付近にLSM含有元素であるLa,Sr,およびMnが検出されている.一方,バルクLSM膜のEDX分析結果(図8(b))では,焼結膜の膜厚は約1/6の約2μmにまで減少し,膜の表面付近にはLa,Sr,Mnに加えYが検出されている10).これは,高出力のレーザ照射によってYSZ基板が分解し,YがLSM膜表面まで拡散したためと推測できる.得られたバルク膜は高い密着性を示す.3.3密着性改善に向けた走査速度パラメータの効果電極膜の電気的特性を評価するにあたって,基板との密着性の低下は接触抵抗の増大の原因となる.たとえば,レーザ焼結膜を電気炉で1150℃,2時間加熱することで,基板界面の焼結を促し,電気特性の評価が可能になる11).現状,数~10μm前後の多孔質電極膜の形成を確認してい図8図78-YSZ基板上に形成したLSM膜の断面FIB-SIM像(傾斜角度30°)(a)多孔質膜:デフォーカス量5,5 mm(b)バルク膜:デフォーカス量2,2 mm8-YSZ基板上に形成したLSM電極膜断面のEDX分析結果:レーザ光を2回照射して焼結膜を形成- 102 -
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