図1SOFCの基本構造(模式図)削削除除ししなないいででくくだだささいい 我々の活動で必要なエネルギをつくり出すため,火力発電や水力発電,再生エネルギなどが利用されている.火力発電などのプロセスにおいて,地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの一つである炭酸ガス(CO2)が排出される.日本における年間のCO2排出量は約12億tで,運輸部門と家庭部門がそれぞれ約2.1億t,1.8億tとされる.また家庭から排出されるCO2の約半分は,電力からと見積もられている1).1960年以降,高効率で汚染物質の排出が少ない燃料電池は,CO2発生を低減するための発電システムとして注目を集めている.燃料電池は,用いられる材料や燃料によって,直接メタノール形燃料電池(Direct Methanol Fuel Cells,DMFCs),高分子形燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cells,PEFCs),固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cells, SOFCs)などに分類される.セラミックス材料で構成されるSOFCは,動作温度が800~1000℃で,水素を取り出すための付加的な改質プロセスが必要ない.またコンバインドサイクルを利用した高い総合効率を期待できる2).そのため,家庭用の定置式燃料電池装置としての利用が考えられている.一方で,運転時や停止時に発生した熱応力で,基板材料の割れや電極膜の剥離等が発生することから,密着性や発電効率の改善に向けたSOFCの製造方法や,600~800℃もしくはそれ以下の中低温動作向けの燃料電池電極,電解質材料の開発,セルを小型化したマイクロSOFCに関する研究が行われている.マイクロSOFCは低出力となるものの,比較的高効率で,動作中の重力の影響が少なく,車載用補助電源やモバイル機器電源などへの利用が検討されている3).図1にSOFCの基本構造の模式図を示す.SOFCの電解質材料には,主にイットリア安定化ジルコニア(YSZ)が用いられる.ジルコニアはイットリニウムなどをドープすることで,高温で高いイオン導電性(1000℃で約20 mS/cm~)を示す材料である4).また,空気極(カソード)にはランタンマンガナイト系ペロブスカイト型導電性酸化物,燃料極(アノード)にはニッケルサーメットなどが主に用いられる.燃料電池は,燃料極や空気極などの電極材料と,電解質,および燃料/空気が接触する三相界面(Three-phase 写写真真位位置置 1.まえがき*茨城大学 理工学研究科 機械システム工学領域 准教授Boundaries,TPBs)における化学反応で発電する.たとえば,空気極のTPBsに接触した酸素(1/2O2)が外部の電気回路/電極から電子を受け取ることでイオン(O2-)化し,電解質材料中を移動する.O2-イオンは,燃料極側で燃料の水素などと結合して水(H2O)を生成し,電子(e-)を放出する.発生した電子は電極や電気回路を通って空気極側に移動して発電サイクルとなる.このように,燃料電池における発電の高効率化には,TPBsが得られる多孔質電極膜と,高いイオン導電率を示すバルクの電解質膜が必要となる5).SOFCの電極膜や電解質膜は,材料のスラリーをテープキャスティング法やスラリーコーティング法で塗布し,電気炉による高温焼成法で作製される.また,化学気相蒸着(Chemical Vapor Deposition,CVD)法,レーザ堆積法等の製造方法の適用も提案されている5-7).これらの方法は,基板全体の加熱処理や焼結であるため,電極のマクロ構造の形成や焼結状態の変更が困難となる.グリーンテープレーザ焼結(Green Tape Laser Sintering, GTLS)法は,金属粉末と高分子バインダから構成されるグリーンテープに,パルスレーザ光を集光照射し,選択的焼結を行う手法で,任意のパターンや形状を有する膜形成が可能である8).これまでに,レーザ焼結法を用いて,直接セラミックス基板上にSOFC用の燃料極や空気極膜の形成を試みた結果,焼結は確認されたものの,多孔質電極膜は電解質基板から剥離する傾向にあった9).K. Yamasaki- 99 -レーザ焼結法を用いたマイクロ固体酸化物形レーザ焼結法を用いたマイクロ固体酸化物形燃料電池用電極膜形成技術の開発燃料電池用電極膜形成技術の開発山崎 和彦*山崎和彦Review
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