CFRP加工効率の改善策図4 mg/kJの単位で評価したCFRPのレーザー加工効率の 図5 パルス幅,波長依存性.それぞれの円の面積は のパルス幅,波長依存性.それぞれの円の面積は 加工効率(mg/kJ)に比例. 加工効率(g/円)に比例.果と合わせて考えると,加工効率が高いほど熱影響が小さくなるという結果が得られた.図2(d)と(f)に相当する円を比較すると,同じ波長(355nm)でもパルス幅が10nsよりも2nsの方が加工効率が2倍以上高くなっているが,掃引速度とパルスオーバーラップの条件の違いも影響していると思われる.図2(d)の場合(2ns /355nm)はパルスオーバーラップが殆どゼロの状態で切断加工を行った.また,同じサブナノ秒領域で図2(b): 35ps /266nmと図2(c): 200ps /800nmに相当する円を比べると,パルス幅と波長が短い分,35ps /266nmの方が加工効率が良くなると期待されたが,照射強度に差が無いために同等の結果が得られたものと推測される.3.2加工効率の経済的評価mg/kJを単位とした物理的なレーザー加工効率を,g/円を単位とした経済的な評価に変換する事を試みる.表5に各種レーザーのフォトンコスト(円/kJ)の概算値を示す.市場価格に関しては,あくまで筆者の経験に基づく予測値であるため,読者の実情に応じた値に変えて比例計算していただきたい.万円/Wから円/kJへの換算には,装置償却までの運転時間を2000時間/年で5000時間(〜2×107秒)と仮定した.一例としてフェムト秒レーザーの場合は,1000万円/(W×2×107秒)で円/Jが得られる.運転費用や消耗品費用は無視している.図5にg/円の単位で評価したCFRPのレーザー加工効率のパルス幅,波長依存性を示す.それぞれの円の面積は加工効率(g/円)に比例している.図4の物理的な評価においては短パルス・短波長ほど加工効率が高い結果が得られたが,図5の経済的な評価においては装置価格が比較的安価な赤外ナノ秒レーザーの優位性が示された.また,同じナノ秒領域でも,より短いナノ秒パルス(10nsよりも2ns)且つ短波長で最も高い加工効率が得られた.UVナノ秒レーザーの装置価格は赤外ナノ秒レーザーの約4倍であるが,高い物理的な加工効率がその差を上回ったものg/円の単位で評価したCFRPのレーザー加工効率 と言える.3.3.1図4に理論限界値として45mg/kJの円を表示しているが,これは照射エネルギーが全て吸収され炭素繊維の蒸発(昇華)に費やされた場合の値である.実験を重ねていくと,CFRPを切断するには切り代に相当する部分の炭素繊維を全て蒸発させる必要はないということに気付いた2).表1に示す様に,樹脂に比べて炭素繊維を蒸発させるのに要するエネルギーは43倍である.炭素繊維の蒸発量を最小限に抑える工夫が重要となる.図6に少ないエネルギーでCFRPを除去するアイデアを示す.ポイントは炭素繊維を細切れにした上で周囲を固める樹脂を蒸発させる事である.図6(a)は多重線加工を示す.まず,炭素繊維に切れ目を入れ,少し離れたところを照射すると,炭素繊維が細切れで除去され,エネルギーの節約ができる.この時,集光点の左側に位置する炭素繊維は熱的に孤立しているので温度が上がりやすくなり,炭素繊維を固定している樹脂が容易に蒸発する.図6(b)は2ビーム同時照射の例を示す.図6 CFRPのレーザー加工効率を改善するアイデア- 92 -
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